2022年はここまで「敵対的TOB」ゼロ、東洋建設株で投資ファンドと攻防戦も

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東京建設にTOBを実施中のインフロニア・ホールディングス(本社が入るビル、東京・飯田橋)

2022年のTOB(株式公開買い付け)は波乱含みだった前年と打って変わり、平穏に推移している。4月も後半に入り、早くも1年の3分の1を迎えようとしているが、敵対的TOBはゼロのまま。2021年は4月までに5件、2020年も3件の敵対的TOBが発生していたのに比べて様変わりだ。

ただ、現在進行中のTOBの中には投資ファンドの関与などで成立が危ぶまれる案件もあり、先行きは予断を許さない。

前年から一転 「敵対的」音なし

TOBの年間件数は2021年70件、2020年60件。このうち敵対的TOBは2021年、2020年ともに各5件で、2年連続で2007年と並ぶ過去最多を記録した。なかでも2021年の場合、5件の敵対的案件すべてが4月までの案件で、前半に集中した。

ところが、2022年は一転して、年明けからここまで“音なし”の状態。TOB件数は20件(届け出ベース、4月18日時点)と前年の同時期(27件)を2割以上下回るものの、すべてを対象企業の賛成を得て行われる友好的TOBが占める。

1年前を振り返ると、年明け早々に日本製鉄が東京製綱に敵対的TOB(成立)を実施。この後、日邦産業へのフリージア・マクロス、日本アジアグループへの旧村上ファンド系投資会社シティインデックスイレブンス(東京都渋谷区)、インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人への米投資会社スターウッド・キャピタル・グループ、富士興産へのシンガポール投資会社アスリード・キャピタルによる敵対的TOB(いずれも不成立)が次々に起きた。

さらに昨秋はSBIホールディングスによる新生銀行への一件も一時、敵対的TOBに発展したが、新生銀行が最終的に「反対」を取り下げた経緯がある。

日本では敵対的TOBは長らくタブー視されてきた。国内初の買収防衛策の発動で知られる「ブルドックソース事件」があった2007年の5件をピークとし、以降は年間1件前後で推移。ところが2019年(3件)を境に動意づいた。

2019年は伊藤忠商事がデサント、2020年はコロワイドが大戸屋ホールディングスと対立の末、敵対的TOBに踏み切ったことが記憶に新しい。

暗雲漂う東洋建設へのTOB

2022年はここまで20件を数えるTOBの大半がすでに成立し、進行中の案件は現在3件。このうち、暗雲が立ち込めているのが東洋建設をめぐるTOBだ。

前田建設工業を中核とするインフロニア・ホールディングス(HD)は3月23日、20%余りを出資する東洋建設の完全子会社化を目的にTOBを始めた。買付代金は最大579億円。ところが、東洋建設の株価はTOB開始とともに、1株あたりの買付価格770円を上回る高値圏で推移し、4月18日には一時998円、終値950円とそろって年初来高値を付けた。

多くの株主にとってはTOBに応じるよりも市場で売却した方が有利な状況で、このままでは予定していた株式を買い付けできず、5月9日を期限とするTOBの成立が困難視される。

東洋建設株については3月末に「WK」というケイマン諸島籍の投資ファンドが5.84%を新規保有したことが判明。WKが4月15日に提出した直近の大量保有報告書によると、保有比率は20.75%まで高まっている。こうした突如浮上した投資ファンドとの攻防戦が株価上昇を誘う展開となっているのだ。

東洋建設株が現状の高値圏で推移するようであれば、インフロニア・HDとして今後、買付期間の延長や買付価格の引き上げという条件変更を視野に入れざるを得ず、難しい判断を迫られることになりそうだ。

◎TOBの推移  ※2022年分は4月18日時点

総件数 うち敵対的TOB 不成立
2022 20 0 0
2012 70 5 8
2020 60 5 6
2019 46 3 4
2018 42 1 0
2017 46 1 2
2016 50 0 0
2015 50 2 0
2014 36 1 0
2013 56 1 0
2012 52 1 1

文:M&A Online編集部

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