【解説】東洋建設のTOB攻防戦 買収提案と防衛策の動向

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3.東洋建設の対応

上記2にもかかわらず、東洋建設はYFOらの提案を支持せず、YFOらを標的とした本買収防衛策の導入に至っている。その理由としては主として以下のものがあげられている。

(1)前提条件の放棄
東洋建設は、YFOらTOBでは東洋建設取締役会の賛同表明及び応募推奨をその前提条件としているものの、YFOらはこの前提条件を放棄可能としており、放棄さえすれば賛同・応募推奨がなくともTOBを開始できてしまうことを重大視している。これに対して、YFOらによる後の書簡では、「反対の意見を表明された場合に、前提条件①を放棄して貴社に対する敵対的買収を開始するという意図は全くございません。貴社との協議の結果、本公開買付けの実施に向けて何らか柔軟な対応が必要となった場合に備えて定めているに過ぎません。」と回答している。

(2)スタンドスティル期間の短さ
東洋建設からの申し入れのあった株式の追加取得を行わないことを約する期間(スタンドスティル期間)について、YFOらは6月下旬までとしており、これはYFOらTOBの検討評価を行うための期間としてあまりに短い。この短期間にYFOらTOBの受け入れを迫ることは強圧的であると受け止めざるを得ない。

(3)不十分な説明
YFOらの買収後の経営方針・事業計画についてなお十分な説明がなされていない。

(4)大量保有報告書上の保有目的
大量保有報告書(変更報告書)上、YFOらTOB提案に至るまでのWK 1 Limitedらによる当初の市場での株式取得の保有目的を「純投資」・「重要提案行為該当なし」としていたにもかかわらずYFOらTOBを開始しようとしている。

(5)当初の市場での取得価格
公開買付価格1,000円で買付けを行う用意があったことを開示しないまま市場でYFOら公開買付価格1,000円を下回る価格で株式を取得したことは、今後も株主共同の利益を軽視する行動に出る蓋然性が高い。

(6)未公開情報利用の可能性
東洋建設はアスリードに前田建設を中心とする組織再編への参画検討に関するアドバイザリー業務委託契約を締結していたところ、YFOの最高投資責任者はアスリード担当者として上記検討に参加しており、同契約に違反して東洋建設の未公開情報を利用して株式の買集めを行った可能性がある。

柴田 堅太郎 (しばた・けんたろう)

所属弁護士会
第一東京弁護士会・2001年登録(司法修習54期)
ニューヨーク州弁護士・2007年登録

取扱分野
M&A、組織再編、ジョイントベンチャー、ベンチャーファイナンス、コーポレートガバナンス、 敵対的買収防衛、株主総会指導、企業の支配権獲得紛争などのコーポレート案件、コンプライアンス、労務問題、企業法務全般

柴田・鈴木・中田法律事務所 HP
http://www.ssn-law.jp/


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