二項対立の設定で企業文化の違いが浮き彫りに

特に、デューデリジェンスの際は、企業文化の違いを浮き彫りにするには、SERVEの各要素で二項対立を設定し、どちらに振れているのかを検証すると良い。最も簡単な検証方法はマネジメントインタビューやアンケートだ。自社と対象企業のそれぞれで実施してみて、差分を考察してみると良い。客観的に企業文化の違いが見えてくるに違いない。下図に二項対立の例も添えた。

「M&Aの目的達成にSERVEするガバナンス」は覚えておいて損はない。

1.Structure(組織設計):戦略を実行するために最適な組織は?

▼組織図と移行計画
✓本案件の目的・戦略に照らした、新会社に期待する役割は?
✓新会社に期待する役割に照らした、適切な“組織図”は?
✓統合・再編の難易度がきちんと把握されたプランになっているか?

二項対立の例
・中央集権的 ⇔ 分権的
・フラットな組織を志向 ⇔ ヒエラルキーの明確な組織を志向 
・独立採算を志向 ⇔ 分業を志向

2.Executives(経営体制):組織を動かすために最適な布陣は?

▼取締役会や経営会議、その他重要会議体の人数、構成
✓重要会議体の位置づけは?
✓監督・コントロールすべき意思決定機関はどこか?
✓どれだけ手厚く監督するか?

▼取締役等主要ポストの人選
✓キーマンはだれか?誰をリテインすべきか?
✓現経営陣の自主性はどの程度残すべきか?
親会社から誰を派遣するか?

▼サクセッションプラン
✓経営陣の中に、交代できない経営者はいるか?
✓1~3年以内に後継者を育成しきる体制が組まれているか?

▼レポートライン
✓上司部下の信頼関係を新たに構築する準備はあるか?
✓受け取ったレポートに対して有益なフィードバックを返せるか?

二項対立の例
・個人重視 ⇔ チーム重視
・スピード重視 ⇔ 精度重視
・上からビジョンを提示する ⇔ 下からの企画を精査する

3.Rules(ルール):経営者をどのようなルールの下で機能させるか?

▼子会社と親会社の責任と権限
✓新会社に期待する役割と照らして、子会社に付与する責任と権限はどうするか?
✓特に何を厳格にコントロールすべきか?(コンプライアンス、ブランド、M&A等)
✓KPIの目標値設定や戦略策定を、子会社に、どの程度まで権限移譲するか?

▼各ポストの責任、権限
✓新会社に期待する役割と照らして、各ポストに責任と権限をどの程度まで付与するか?

▼各会議体
✓取締役会は年間を通じてどのようなスケジュールで開催するか?
✓取締役会の重要課題は?(中計レビュー、投資計画レビュー、次世代育成など)

二項対立の例
・原理原則重視 ⇔ 臨機応変
・意思決定の内容重視 ⇔ 意思決定のプロセス重視
・トップダウン ⇔ 合議
・喧々囂々の議論 ⇔ 冷静な議論

4.Visualization of Objectives(目標管理):経営者のパフォーマンスをどのように測定するか?

▼KPI設計
✓KPIは、シナジー創出のプロセスを評価できる指標になっているか?
✓設定した目標値(KPI水準)は、適切にストレッチした水準となっているか?

▼モニタリング
✓目標値と実績値の差分を把握できる仕組みになっているか?
✓差分の要因分析をして、打ち手の立案・実行ができる仕組みになっているか?
✓モニタリングの担当者は、能力のある的確な人物が設定されているか?

二項対立の例
・ストレッチ ⇔ 堅実
・努力目標 ⇔ 必達目標
・リスク許容 ⇔ リスク回避
・トップダウン ⇔ 自主性重視

5.Evaluation(評価制度):パフォーマンスに基づいて、経営者をどのように処遇するか?

▼リテンションプラン
✓キーマンのリテンションに対して、有効な施策を検討しているか?(金銭、キャリアパス等)
✓リテンション期間と金銭的報酬体系は連動しているか?

▼評価プロセス
✓評価ポリシーとしてプロセス重視 / 結果重視のどちらが望ましいか?
✓評価の担当者は適切か?
✓評価指標は、“戦略実現の進捗度合い”や“目標達成度合い”と連動できているか?

二項対立の例
・信賞必罰 ⇔ 総合評価
・短期評価 ⇔ 長期評価
・結果 ⇔ プロセス
・定量 ⇔ 定性
・成果と報酬の連動 ⇔ 報酬の連動抑制

文:経営コンサルタント、MAVIS PARTNERS代表 田中 大貴