「ルノー株を買い増して議決権を消す」は現実的な選択か?

日本の会社法の規定によれば、日産がルノー株の保有比率を現在の15%から25%以上に引き上げれば、ルノーが持つ日産株の議決権は消滅する。つまり、日産はルノーの意向に関係なく経営できることになる。ルノーの時価総額は約183億2900万ユーロ(約2兆3600万円)なので、その10%を買い増すとしたら、2360億円の資金が必要だ。

しかも、その金額で確実に株を取得できるかどうかは疑問だ。通常、こうした経営支配を狙う株式取得には株式公開買付けTOB)の手法が使われる。TOBを仕掛ける側は「どうしても株を集めたい」から、「プレミアム」をつけて株式市場での価格よりも高い価格で募集をかけるのが一般的だ。

日本の株式市場でのTOBプレミアムは2018年実績だと、最高はアーバンライフ株につけた三菱地所の+139.35%。ルノー株は欧州で取引されているが、日本と同レベルのプラミアムが設定されると仮定した場合、日産の買収資金は5640億円に跳ね上がる。

全プレミアム平均の23.96%にすると2920億円で済むが、欧州の投資家には日産とルノーのゴタゴタは広く知れ渡っており、高めのプレミアムを設定する必要がありそうだ。

さらにTOBは文字通り「公開」なので、日産による株式取得の動きはルノーに筒抜けとなる。日産が仕掛けるTOBに対抗して、ルノーが第三者割当増資による日産の保有比率引き下げなどの買収対抗策を講じる可能性が高い。チャレンジしても実現は難しいだろう。

日産の交渉相手となるルノーのティエリー・ボロレ暫定最高経営責任者(同社ホームページより)

(下)へつづく

文:M&A Online編集部