放送事業以外の分野への多角化を図る

 05年、ライブドアや楽天による民放局への敵対的買収の試みが、これまで許認可規制に甘んじてきた民放局の経営を揺るがすとともに、番組などの民放局が持つコンテンツとITを融合させるきっかけとなった。

 例えば、ライブドアは05年2月からフジテレビの筆頭株主であるニッポン放送の株を大量に取得することで、フジテレビの株を手に入れ支配下に置こうとした。ライブドアの目的はフジテレビの持つコンテンツを自社の事業に転用しようというものだった。結果的にライブドアとフジテレビは業務提携することとなり、ニッポン放送はフジテレビの完全子会社となったが、楽天によるTBSの株式大量取得も同様で、これらの事件をきっかけに民放各社は買収防衛策の必要性と、自社コンテンツとITの融合化の必要性に迫られる。日本テレビもこれらの事件を受け、買収防衛策を講じるとともに、コンテンツの2次利用・多角的配信を目指すということを経営方針の一つに掲げ、「テレビ局」から「トータルメディア企業」を目指すマルチコンタクトポイント戦略という戦略を取っている。

 例えば、モバイル・インターネットによるコンテンツ配信、地上波放送、衛星放送、通信放送などの伝送路に、日本テレビのコンテンツを積極的に配給していくというものである。また、この戦略には放送以外の収入を拡大していくという要素も含んでおり、通信販売事業とインターネットや、テレビ番組を連動させた事業展開や、第2日本テレビ(注2)のオリジナルコンテンツの充実を目指している。他にも、アニメなどの映画を地上波と連動させて放送を行うことで放送外収入を拡大するという動きがあり、例えば話題作の特番を地上波で放送し、映画の集客数増加を促すなど、積極的に映画と地上波の連携を図っている。

 注2:日本テレビ放送網が運営するインターネットによるビデオオンデマンド事業。現在は「日テレオンデマンド」に統合されている。

 こういった動きと同時に、ネット関連企業のM&Aや他企業との共同出資も行っており、14年2月には有料会員数約120万人(15年12月時点)を抱えるHulu Japanを買収している。また、15年5月にはバスキュールと合併会社HAROiDを設立し、テレビとインターネットをつなぐアプリの開発に力を入れようとしている。

 一方、日本テレビは事業の多角化を進めるにつれ、資産は増加しているもののそれが売り上げに反映されていないという課題も抱える。99年3月期から直近の決算期を比較しても総資産、純資産共に倍以上になっているものの、売り上げや利益はほぼ横ばいでの推移となっている。これは、マルチコンタクトポイント戦略を推し進めるばかりで、売り上げにつながる事業展開ができていないということを示している。

 今後、日本テレビに限らず民放各社が放送関連事業以外の事業への多角化を図ろうとする中で、日本テレビが現在の放送業界での地位を確立するためには、トータルメディア企業としてこれまで行ってきた経営が正しいものだったのかという見直しと、今後のM&Aも含めた各事業の体制を見直す必要があるといえる。