M&Aは、経営陣の同意を得て行う「友好的買収」がほとんどです。しかし上場企業では、経営陣の同意を得ない「敵対的買収」が実施されることもあります。
敵対的買収とは、買収者が対象企業の同意を得ずに、買収を仕掛けることです。上場企業の株式を取得するには、市場で購入する他に、相対取引もしくはTOB(株式公開買付け)があります。
とくに株主総会の同意を得ないでTOBを行う場合を、「敵対的TOB」といいます。世界的に敵対的買収は活発化していて、2018年は26件と19年ぶりの高水準になりました。敵対的買収増加の背景には世界的なカネ余りがあります。
景気や株価が過熱する局面では、企業のリスクテイク(積極的にリスクを取ってリターンを目指すこと)が活発化し、敵対的な手法でも強引に買収を進めようとすることがあるからです。
敵対的TOBは1980年台後半に増え、米コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)が1989年にRJRナビスコを約300億ドル(約3兆3000億円)で買収した事例が有名です。ただ、2000年代に下火になり、2008年のリーマンショック後は、年一桁台にまで減少していました。
しかし、世界的な景気回復から2018年の敵対的買収の成立件数は26件*と、1999年(42件*)以来の高水準となったのです。*日本経済新聞2019年5月17日付「敵対的買収、再び高水準 昨年19年ぶり件数」より
敵対的買収は買収価格が上昇しやすく、それに伴う減損(資産の損失)リスクもあります。仕掛ける方の企業が巨額の減損処理を強いられることもあるので、注意が必要です。
今回は、M&Aが株価に与える影響について解説しました。まとめると以下の通りです。
売り手=被買収企業、買い手=買収企業
売り手 | 買収される企業にとって、M&Aは基本的に株価にとってプラス(+)要因です。とくに敵対的買収の場合は、市場価格にプレミアムがついた値段で買収価格が決定されるので、株価上昇要因になります。 |
買い手 | 買収企業の株価は評価がわかれます。大型買収に関しては、多額の借り入れで行う場合があるので、株価下落要因になります。とくに敵対的TOBでプレミアムが大きく上昇した場合は、マイナス(ー)要因になります。ただ、市場の評価とは別に、EV/EBITDA倍率で割安と判断されれば、長期的には株価が上昇に転じる可能性があります。 |
M&Aによる株価に関しては、短期的にマーケットに振らされることがあるものの、中長期的に企業業績などのファンダメンタルがどうなるかが大切です。株価の値動きに一喜一憂することなく、M&Aによるシナジー効果がどの程度あるのかを見極めるようにしましょう。
文:M&A Online編集部
筆頭株主の伊藤忠商事によるデサントへのTOBは、国内では稀な大手企業同士の敵対的買収(TOB)に発展しそうです。現在の株価が割高なのか、TOB期待値を算出してみました。