[相続税] 会社に財産を移して評価額を圧縮?その③

※ 下記記事中の時価等の数値情報や話題は、元記事となるブログ記事作成当時(2015年4~5月頃)のものであり、現在直近の数値情報や話題ではございません点 ご承知おきください。

相続税対策として資産管理会社を作り、その会社へ資産を移し、子供に会社を継がせると、節税対策になるのでしょうか。あらためて最初にいただいたご質問を再掲させていただきます。 

『よく相続税対策として資産管理会社を作りその会社へ資産を移し、子供に会社を継がせる方が節税対策になると聞きます。もちろん金額により変わってくると思いますが普通に親から子へ贈与税を支払うより得なのでしょうか?この辺の仕組みがさっぱり分かりません』 

前回 、前々回 で、ざっくりした仕組みを説明させていただきましたが、結論から言いますと、その① で書いたように、「一概に言えませんが、(←すいません)、現行税制下では節税になるケースもあります。」

総合的なコストやメリット、デメリットを具体的に比較して判断すべきです。というのが正直なところです。

『その会社へ資産を移し、子供に会社を継がせる方が節税対策になると聞きます。』

例えば、その会社が債務超過の状態で、社長が持つ不動産を現物出資しても、まだなお債務超過の状態であれば、無償で株を子供に移す、なんてことも考えられますね。

ケースによっては、子供に現金を贈与し、その現金を元手に会社を設立させ、その子供が100%株主の会社を作ることも可能です。そして、社長が雇われて、その会社で利益を稼ぐなら、相続税はかからない、なんてことも考えられます。

『普通に親から子へ贈与税を支払うより得なのでしょうか?』

上記のような仕組みなどを活用すれば、得なケースは大いにあり得ます。個別事情によって異なるため、「気になるなぁ」という人は、税理士に聞いてみてはいかがでしょうか。

ただ、「一般論でいいし、お前の個人的な意見でいいから言ってみろよ」と言われれば、前提条件(財産の額、規模、相続人の状況等)によって異なりますが、一般の方レベルだと、「あまり大げさなことはしない方が良い」と思います。そんなに大げさなことはしなくても、地味な節税策はあると思います。 

「資産管理会社を作って不動産を借金で買ってウンヌン・・・。」はもしかしたら、銀行・建設業者・不動産業者・会計事務所だけが勝ち組になって、「ハイエナのエサ」にされてしまうかも知れません。ただし、事業経営をされている方で、純資産がそこそこアリ、かつ、親族内承継を考える方は、きちんと将来をイメージした対策をすべきでしょう。

相続税対策はもちろん、さらに、事業承継まで含めると「一朝一夕」にはできません。長期的な視野に立った対策が必要になります。 

次に、相続税対策のポイントをいくつかあげます。

「早く対策を打つほど選択肢は多いのは事実。」

相続が起きてからでは、打てる対策はほとんどありません。今回の記事のような株価の引き下げ、会社への財産の拠出、生命保険金、退職金、弔慰金、養子縁組などなど、対策はいろいろありますが、これらは、ほとんどが生前に決められるものばかりです。「俺の死?そんなの考えるのやだなぁ」という気持ちは分かりますが、こと、相続税のことだけを考えると、生前に対策を打つ方が、確実に安くなります。

「森を見て、枝を見て、葉を見て、もう一度森を見よう。」

物事にはすべてメリットとデメリットがあります。そして、それらを比較して、何かを決めるのです。しかし、その比較をするときに、あまり細かい論点だけに目が行き過ぎ、大きな志(こころざし)や道理(どうり)を歪めてしまうことがあります。枝葉のテクニックも大事なのですが、全体的な「あれ?俺、なにしたかったんだっけ」という”おおもと”も大事です。そして、あるスキームが、脱法行為なり、評価通達の趣旨から逸脱していないか、のチェックも大事です。

「(本当に心配するかどうかは別として)ネガティブ事項も認識しよう。」

節税対策はすべて良いことばかりではありません。最善だとは思っても「あちゃー、やっぱりやらなきゃ良かった」ということもあります。ですから、ネガティブな想定事項も一応認識した上で、そのダメージを最小にする、あるいは、そもそもその対策を行わない、などの判断も必要です。

可能性としては、こんなことが考えられます。(メリットもあるのですが、ここでは、あえてネガティブ要素だけあげてみます。下記の事例は一部です。)  

ネガティブ要素コメント
生前贈与をした場合逆縁(親より子が先に死んでしまう等)のケース。せっかく、相続税対策のために生前贈与をしても、かえって戻ってしまうこともあります。
株式(支配権)を分散した場合株式については、議決権割合を注意しましょう。例えば3分の2以上を持っていればなんでもできてしまいますし、1%以上なら帳簿閲覧権もあります。また、「相続税対策」と称して、従業員持ち株会やら親戚に株式を分散しているケースもありますが、M&Aなどの外部売却の際には、かなり苦労することもありますよ。「相続税対策」が仇(あだ)になるケースです。
持ち株会社をつくった場合持ち株会社は前述のように評価額を下げる効果はありますが、”現金化”する時がやっかいです。実際に上場株を売却して株主に配分しようとすると、売却益に法人税がかかり、株主である個人にお金を戻す時に所得税がかかる。驚くほど手取りが減ります。「だったら、相続税は高いかも知れないけど、個人で直接持った方が売却時の所得税率は20%だから、そっちの方がトクじゃね?」という考え方も成り立ちます。
養子縁組をした場合「とりあえず、息子の嫁を養子にして節税しよう」なんてケースもあるかも知れません。しかし、息子さんと嫁さんが離婚したらどうなりますか。嫁さんも法定相続人ですよ。
借入で不動産を購入して節税をした場合借入で不動産を購入して節税、よく聞きますね。実際に相続税は減るでしょう。(そもそも相続税がかからない人は関係ありませんので。)でも、少子高齢化社会。ただでさえ不動産は余ります。実需が減るのです。率直に言えば、都心ならまだいいでしょうが、田舎では運用そのものが厳しいかも知れません。(私は不動産の専門家ではありませんが。)
税制そのものの改正リスク こればっかりは将来のことなので、読み切れるものではありませんが、やはりリスクはあります。せっかく行ってきた対策も、改正でパー、みたいな。例えば、昭和から平成にかけてのバブルの時期は「不動産を借り入れで買って節税しようぜ」って対策には、「取得価額課税」という対抗制度が導入されました(その後廃止)。みんなが一斉にやる対策や抜け道ほど要注意です。それだけマークされますから、制度改正も可能性が高まります。 

実際には可能な限り、この改正リスクを最小限に抑える(生前贈与等の検討など)ために、現在確定している制度の中で対策を打つ、ということも必要です。 

相続税対策には、税金面では、所得税・法人税・相続税・贈与税・消費税が絡んでくる場面も多いです。そして、当然、税金面のみならず、民法や会社法などの諸法律も絡んできます。さらには、親族間の「感情」や「勘定」も絡んできます。

ご参考までに、私なりの対策の行い方を書くと・・・・。

順番やること
1.ヒアリング どんな想いがあるのか、何をどうしたいか、何が心配か、を伺います。人によって「何も知らない」「ある程度知っている」「ほとんど知っている」と知識に差がありますから、その方のレベルに合わせてお話を伺います。
2.事実関係の資料集め 可能な範囲で事実関係を確認できる資料を集めます。(預金通帳、固定資産登記簿謄本、課税明細書、相続人関係図、会社を経営している人の場合は会社の決算書・申告書など)
3.分析・対策案立案 いくつかの対策案を立案し、シミュレーションをします。
4.報告、説明 対策を報告し、説明します。ケースによっては、3年スパンくらいになるものもあります。
5.対策案練り直し ご意向を聞いて、対策案を練り直し、絞っていきます。
6.実行 選択した対策を実行していただきます。

と、こんな感じになります。

さて、ご質問に対する回答につきましては、ここでいったんの区切りとさせていただきます。お読みいただきありがとうございました。

[著]節税ヒントがあるかもブログ メタボ税理士さん
[編集・改変]M&A Online編集部
本記事は、「節税ヒントがあるかもブログ」に掲載された記事を再編集しております。
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