今回は「税効果会計」について、ざっくりと説明をしてみます。 まず税効果会計について、現状では(罰則が適用されたりすることはほとんどないため)中小企業では導入していないと思います。
一方、上場会社や上場準備会社では税効果会計の導入は必須です。適用していないと会計監査人 から適正意見 がもらえないので、適用しないという選択肢はあり得ません。
税効果会計基準には、
『税効果会計は、企業会計上の資産又は負債の額と課税所得計算上の資産又は負債の額に相違がある場合において、法人税その他利益に関連する金額を課税標準とする税金(以下「法人税等」という。)の額を適切に期間配分することにより、法人税等を控除する前の当期純利益と法人税等を合理的に対応させることを目的とする手続である。』
とあります。
この「企業会計上の資産又は負債の額と課税所得計算上の資産又は負債の額に相違がある場合」とはどういうことかというと、
(例)賞与引当金の計上の違い
会計上 | 賞与引当金の計上は、原則として必須(企業会計原則注解18) | 注※中小企業では計上していないケースもあります。 |
法人税法上 | 賞与引当金の繰入は損金となりません。 | 原則として実際支給日の属する年度の損金です。法人税法上の賞与引当金は平成10年に廃止されました。 |
というように、会計と税務の処理が異なります。
会計の世界では、(企業会計原則注解18)
『[注18] 引当金について(貸借対照表原則四の(一)のDの1項、(二)のAの3項及びBの2項)将来の特定の費用又は損失であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として引当金に繰入れ、当該引当金の残高を貸借対照表の負債の部又は資産の部に記載するものとする。』
とされています。
このように、会計上は引当金の計上はすべきであるのに、法人税の世界では、ごく一部の例外を除き引当金の計上は認められません。
このような会計と税務で扱いが異なる項目で、「企業会計上の資産又は負債の額と課税所得計算上の資産又は負債の額に相違がある場合」が生じるのです。
「法人税で認められている引当金」
貸倒引当金(法人税法52条)、返品調整引当金(法人税法53条)、特別修繕引当金(租税特別措置法57条の8)
「会計上は計上を認められるが、法人税で認められない引当金」
製品保証引当金、売上割戻引当金、ポイント引当金、有給休暇引当金、賞与引当金、工事補償引当金、退職給付引当金、役員退職慰労引当金、修繕引当金、債務保証損失引当金、損害補償損失引当金など
法人税では、費用の認識タイミングの原則は債務確定基準が適用されるためです。この債務確定基準については具体的には法人税基本通達2-2-12 に規定されています。
本年3月に成立予定の平成29年度税制改正で、スクイーズアウトに関し重要な改正が予定されています。
買い手企業は、できることなら投資回収を早めに済ませて、事業の成長や次の買収に資金を使用したいところです。そのためには税金の支払いを抑制する工夫が大事です。