「起業家のために汗をかく」作戦とは ジャフコ グループの南黒沢晃パートナーに聞く

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「組織のいいところは活かしつつ、個人を打ち出していく」と取り組みを披露するジャフコ グループの南黒沢氏

ベンチャーキャピタル(VC)専業大手のジャフコ グループ<8595>は、2020年10月に社名をジャフコからジャフコ グループに変更した。社名を変えることでどのような変化を見込んでいるのか。同社パートナーで事業投資担当兼事業投資部長の南黒沢晃氏に、その狙いや目標、投資戦略などについて聞いた。

実弾紹介、初年度100件

-社名変更によって、何を変えようとしているのでしょうか。

投資会社である当社には四つの収益源がある。国内のベンチャー、国内のバイアウト、北米のベンチャー、アジアのベンチャーがそれで、この四つの収益源の多様性を改めて打ち出そうということで社名を変更した。同時にリブランディング(商品やサービスなどのブランドの再構築)を進めるのが狙いだ。

当社は1973年に創業し48年の業歴があり、古くからあるVCというイメージが定着している。ところが最近、VC活動が属人化しており、組織力をもって営業をしていけば開拓できるというような世界ではなくなってきている。

ベンチャーの関係者は、SNSを介して友達感覚でつながっており、スタートアップがファイナンスする時に、属人的なネットワークが活用されるようになってきた。

こうした人たちは古い伝統的な社名よりも、誰と組むか、どの人と一緒にやったら面白いか、といったことに価値を置いている。

ジャフコとしては組織のいいところは活かしつつ、個人を打ち出していくスタイルに変えようとしており、社名変更とともにリブランディングに取り組んでいる。

敷居の高い伝統的なVCというイメージを払拭して、起業家のことを一番考えているんですよ、起業家のために一番汗をかいているんですよということをもっとPRしていきたい。

-起業家のために汗をかくとはどのようなことですか。

例えば営業の実弾紹介(ビジネスにつながる取引先の紹介)はその一つで、今年上場したある投資先企業には投資初年度に100件ほど実弾紹介した例がある。今後はより実弾数を増やすとともに、商談が成立する確率を上げようと考えている。

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大企業の課題解決に注力

-7月7日に新規事業をテーマにしたセミナーを開催されました。これもその一環ですか。

新規事業にテーマを絞ったセミナーは今回が初めてだったが、1300人ほどの申し込みがあり、これまでの最高の600人を大きく上回った。参加者の7割は大企業の担当の方で、新規事業を起こす際の参考にしたいというのが参加の理由のようだ。アフターコロナを考えた時に、このままではだめだという思い、何をすればいいのかという思いが鮮明になってきたように感じる。

-ベンチャーへの投資を事業とされているのに、なぜ大企業を対象としたセミナーをやられているのですか。

我々はVCとして投資先を支援するためにスタートアップと大企業のビジネスマッチングをやってきたが、うまくいかないケースが多く、再現性が乏しいことに課題を感じていた。

スタートアップ、大企業、それぞれに課題はあるが、大企業の方が改善余地は大きい。そこで、大企業の視点で課題に向き合っていけば、結果的にスタートアップと大企業のビジネスマッチングの再現性をもう少し高くできるのではないかと考えた。スタートアップの成長を支援することが最終的な目的だが、そのために大企業の課題解決にも取り組んでいる。

-ところで、今期の業績予想を未定とされています。理由は何でしょうか。

このところ毎期、未定としている。従来は年間200件近い新規投資をしていたが、2010年からは厳選集中投資という形に舵を切って、今は年間20件くらいの投資に絞っている。その分、出資比率は上がっており、200件の時代は10%未満だったのが、今は15%前後になっており、1件のエグジット株式公開株式譲渡など)で業績が大きく変わるようになった。このため業績が読みづらく、割り切って業績予想を発表しないことにした。

【南黒沢晃氏】1973年生まれ。名古屋市出身。複数の事業会社、投資会社、証券会社(野村証券)を経て、2012年に入社。執行役員事業投資部長などを務め、2018年にパートナー就任。
事業承継案件が中心であった同社のバイアウト投資において、新たなアプローチとして事業再生案件や、大企業が自社の事業の一部を切り出してベンチャー企業を創設するカーブアウト案件、エクイティと不動産の複合型案件などを提案。入口の交渉から投資先の経営、エグジット戦略に至るまで一貫して手がけてきた。

聞き手:M&A Online編集部 松本亮一編集委員

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