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熟図ーどこまでしっかり見通せるか|M&Aに効く『言志四録』

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細部を大事にして熟図することが大切(Artem Peretiatko/iStock)

最悪の事態でも慌てない

順境にいるときも、逆境・退路を忘れてはいけない(bowie15/iStock)

 熟図する、細部までしっかり注意を払うことで、予防的な対策をし、失敗を減らすことは可能でしょう。それでもダメなものはダメ。どうにもならないことも起こり得ます。人の気持ちだけではなく、時間の経過も大きな障害となる要素です。時間をかけることで、心だけではなく外部要因にも変化が起こり、当初のシナリオが崩れてしまうリスクは増大していきます。

進歩中に退歩を忘れず、故に躓かず。(『言志後録59』 順境にいて逆境を忘れるな)

●光強ければ影もまた

進むときに、退路を考えておけば、つまずくことはない。

 なにかを進めるときに、細部まで熟図することは当然のこと。そこには、退路も含まれています。

 どこまで進んでいいのか。引き返せないところまで行っていいのか。どうにもならなくなったとき、どうやって引き返すのか。予見できない事態が生じたらどうするのか。とくに、「ダメなものはダメなんだ」と判断するにしても、どういう終わり方にすべきでしょうか。そのとき、みなさんがどのように引くのかを、常に考えながら進んでいかなければなりません。

 誰かの気まぐれや気分の変化によって、予期せぬ障害が出現したとき、引き際をきちんと計算しておかなければ傷が深くなる可能性も高まります。

 受ける傷にもいろいろありますが、金銭的な問題よりも時間を失うことによる損失は補填が効かないものです。時間は取り戻せません。当事者の誰もが、平等に時間は失います。しかも失った時間の価値は、立場によって違います。細部まで熟図し、引き際まで考えておく。それは、みなさんにとって失敗を最小限にし、時間的損失を可能な限り回避することになるはずです。

※漢文、読み下し文の引用、番号と見出しは『言志四録』(全四巻、講談社学術文庫、川上正光訳注)に準拠しています。

文:舛本哲郎(ライター・行政書士)

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