五常(仁、義、礼、智、信)の全体の関係を考えながら、さらに論語が私たちに語りかけてくる生き方、さらにはビジネスの道筋を考えていきましょう。

子張問崇徳辯惑、子曰、主忠信徒義、崇徳也、愛之欲其生、悪之欲其死、既欲其生、又欲其死。是惑也、誠不以富、亦祇以異(巻第六 顔淵第十二)

 弟子の一人、子張が「徳を高め、迷いをなくしたい」と師である孔子に質問したときです。孔子は、「誠と信を第一にして義へ向えば、徳を高めることになる。多くの人は、ある人を愛しているときは生きてほしいと思い、その人が悪い人になれば死んでほしいと思うものだ。だが、生きてほしいと思っておきながら、死んでほしいと思うのは、迷いそのものではないか」と。

 こうした本質から逸れた思いに捕らわれていくことが、そもそも私たちを混乱に陥れ、判断を誤ることにつがなるのでしょう。そのために「誠と信で本質を見抜き、義へと進め」と孔子は弟子に告げたのではないでしょうか。

 では、ここで前回から少しずつ明らかになってきた「義」の正体をもう少しビジネスで活用できるように考えていきましょう。

ミッション・ビジョン・パーパス

 前回「M&Aに効く論語7」で、「仁が自分の中から出てきたミッション・ビジョンであるのに対して、義はそれ以前に、すべきことがあるだろう、と示唆しています」と書きました。ですが、まだ「義」についてはピンと来ない。わかったようでわからない。ミッション・ビジョンとくれば、次は目的(パーパス)だろう、と感じた方もいらっしゃるでしょう。

 人を思いやる心、あるいは愛として「仁」をとらえるところからはじまり、それをビジネスに移すとミッション・ビジョンになると考えると、現実に「仁」を対応させることができます。

 さらに「義」を正義とか正道といった概念から、パーパス(目的)へと置き換えることで、私たちにとっての「仁義」がより明確になってくるのではないでしょうか。実際に、企業における、ミッション・ビジョン・パーパスは、そのような相互関係があるはずです。

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「お客様に信頼される、誠実な企業にする」をミッションとしたとき、そのために自分たちはなにをするのかをパーパスとして明確にしていくわけです。

またビジョンは、ミッションを受けてパーパスを実現したときに、自分たちがどのような存在になっているかを示します。

「お客様に信頼される、誠実な企業にする」をミッションとして、では具体的に自分たちがすることは「お客様の健康づくりに貢献する」といったパーパスを掲げることで、ビジョン「社会に不可欠なサービスを提供する企業」を実現していく、といったことが考えられます。

 ミッションやビジョンが対外的に強く発信したい言葉になっているのに対して、パーパスは自分たちの道筋(いわば正義)を示す言葉になっているはずです。