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熟図ーどこまでしっかり見通せるか|M&Aに効く『言志四録』

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細部を大事にして熟図することが大切(Artem Peretiatko/iStock)

どうすれば失敗を回避できるか?

 いくら熟図しても、予見できない事態も起こります。

 どうすれば失敗を回避できるのでしょうか。そもそも予見できない事態(当事者が考えを変えてしまう、信義に反することをしてしまう)をうまく対処して失敗を回避することなどできないのではないでしょうか?

 確かに、失敗の可能性は高まります。でも回避できるチャンスもゼロではありません。

 佐藤一斎は、「細部」について次のように記しています。

真に大志(だいし)有る者は、克(よ)く小物(しょうぶつ)を勤め、真に遠慮有る者は、細事を忽(ゆるがせ)にせず。(『言志録』27 大志と遠慮)

 これを現代語風にアレンジすれば……。

●細かいことも大事

大きな目的に向かっている人は、小さな仕事でも、熱心に取り組む。ずっと将来のことまで、よく考えることのできる人は、細かいことについてもおろそかにはしない。

 細部を重視すること。「神は細部に宿る」などとも言いますが、目的を達成するために細部を疎かにしないことで、防げることも多数あるのです。

 M&Aでは、当事者の気持ちの変化も大きく結果を左右します。短期間で成功したM&Aでは、よく「意気投合」といった言葉が使われます。早い段階で当事者同士の気持ちが通じ合えば、スムーズに進むのです。そこには、お互いの気持ちに対する配慮があります。

 細部の多くは、よくわからない、はっきり見えないものですから、ついつい疎かになりがち。「相手の心の内側までわかるわけがありません」と言ってしまえばそれまでです。でも、その細部を疎かにはできません。できるだけ知る必要があります。

 みなさんも、気が重いときには上司に会いたくない、仕事に行きたくない、といった気持ちになることがあるはず。このように、人の心は、取り出して中身をチェックすることはできないものの、その多くは行動に現れます。

 会いたがらない、資料が来ない、時刻が変更になる、ミーティング時間が短縮される、遅刻するなどなど、当事者の気持ちはなにかしら行動となって現われます。熟図には、こうした点まで含まれているのでしょう。細部を大事にして熟図する。これをやり切ることは難しいことです。

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