「有機ELシフト」を放棄し、「液晶回帰」へ逃げ込むJDI

一方、JDIは2017年10月に従来の液晶重視だった経営方針を改め、有機ELへシフトすると発表していた。主要取引先のアップルが同11月に新型「iPhoneX」で有機ELを初採用し、「世界最高品質」とはいえ従来型液晶では生き残りが難しいと判断したからだ。JDIは有機ELパネルを手がけるJOLEDの子会社化を目指し、海外大手メーカーなどから数千億円規模の資金を確保した上で有機ELの大量生産にメドをつける方針を明らかにした。

だが、2018年3月の発表では資金の調達規模が約550億円と大幅に縮小。出資する企業にJDIが期待したアップルはじめ海外大手メーカーの姿はなく、海外投資ファンドからの第三者割当増資(約300億円)やJDIの経営支援をしている産業革新機構への能美工場(石川県能美市)の売却(約200億円)、液晶パネル向け発光ダイオード(LED)で取引がある日亜化学工業からの資金調達(約50億円)に留まった。しかも調達した資金は有機ELの量産ではなく、従来型液晶の生産強化に充てられる。JOLEDの子会社化も撤回し、有機ELパネル事業へシフトする構想を事実上断念した。

JDIとしては、西野新監督同様「わが社が積み上げてきたものがある。技術的に世界で通用する部分はたくさんある」「有機ELへのシフトを強く発信してきたが、それに追いつかない部分があった。ないもの(有機EL)を求めるよりも、あるもの(従来型液晶)を良くしていく。そこで勝負した方が早い」というのが本音だろう。しかし、すでに有機ELへのシフトは世の流れであり、アップルがiPhoneXの販売失速から従来型液晶へ一時的に回帰したといっても、いずれはその省電力性や高精細度、応答速度の速さ、コンパクトさから世代交代は免れない。

代表監督の「本番2カ月前」の交代は世間を驚かせたが、JDIの液晶生産強化のための資金調達と有機ELシフトの断念は投資家を驚かせた。JDIの株価は下落し、資金調達の要となる第三者割当増資の発行価格は3月30日に発表した当初見込みの1株178円から、4月10日には同143円と2割も安くなることが明らかになった。日本サッカー協会、JDIともに「大胆な変革」へ踏み切る直前に逃避して「現状」に固執する、典型的な「悪しき日本型組織」の行動をとったといえる。

従来型液晶パネル
従来型液晶パネルに回帰するJDI(同社ホームページより)