「結果重視、プロセス軽視」の報道が決断を歪ませる

もう一つ共通点があるとしたら、マスコミの影響だ。サッカー代表監督電撃交代の裏にはスポーツ報道による最近の親善試合での成績不振に対する批判があった。サッカー協会が解任理由として挙げた「選手との信頼関係の崩壊」や、解任そのものの判断も、「ハリルホジッチで勝てるのか?」と疑問視する報道に引きずられた可能性が高い。

だが、ワールドカップ直前の親善試合は、いろいろな状況を想定した戦術を試してみて本番用のデータを採るためのもの。特に相手や場面によって戦術を柔軟に変えるハリルホジッチ前監督であれば、戦術のトライアル(試行)による親善試合の負けは「想定の範囲内」だったはず。親善試合はテストマッチにすぎず、代表チームの最終目標は「ワールドカップでの勝利」だからだ。スポーツ報道は目先の試合で「なぜ負けたのか?」ではなく、「この試合で何を試し、ワールドカップに向けて何を得たのか」を取材し、記事にすべきだった。

経済マスコミでは2017年秋ごろから「JDIの液晶受注が好調」との記事が掲載されるようになり、同社の主要取引先であるアップルのiPhoneX販売が伸び悩み始めると「有機ELがなくても競争に勝てる」との報道が増えた。もちろん、こうした記事のソースはJDIであり、一種の「情報操作」だった側面は否定できない。しかし、このような報道がJDI社内や産業革新機構、経済産業省、金融機関の間でも肯定的な情報として浸透し、いわば「自家中毒」の状況を起こして「従来型液晶でも十分生き残ることができる」との判断につながった可能性もある。

新聞各紙(スタンド)
報道が日本サッカー協会とJDIの判断に影響を与えた可能性も(Photo By Hajime NAKANO)

JDIの「原点回帰」は、すでに株式市場で「ノー」を突きつけられた。サッカー日本代表の「原点回帰」は、W杯ロシア大会で真価を問われる。松浦静山(まつら・せいざん)は剣術指南書「剣談」で、「勝ちに不思議の勝ちあり 負けに不思議の負けなし」と看破した。目先の勝ち負けだけで戦略を決めると、とんでもない「しっぺ返し」を食らうことは肝に銘じておきたい。

文:M&A Online編集部