東海道開業前からあった「貨物新幹線構想」

もともと新幹線にも在来線同様、貨物列車構想があった。東海道新幹線の建設時には東京ー新大阪間を旅客列車が運行しない時間帯に5時間30分で結ぶ夜行貨物列車を運行する計画が浮上。東京と大阪では新幹線貨物取扱駅の用地買収も進められたが、工費の高騰で断念。買収した用地は、在来線の東京貨物ターミナル駅と大阪貨物ターミナル駅に転用されている。

着工されたものの、利用されなかった貨物新幹線用の引込高架線跡(新幹線大阪運転所、Photo by Nkensei)

2020年3月のダイヤ改正で1時間に最大で「のぞみ」12本、「ひかり」2本、「こだま」3本の合計17本が運行する東海道新幹線では貨物列車を走らせるのは不可能だ。JR東海<9022>にしてみれば、そんな余裕があるのなら稼ぎ頭の「のぞみ」を増発したいだろう。これだけの過密ダイヤになれば、深夜の保線作業も頻繁に実施する必要がある。

しかし、上越、東北、北陸新幹線はダイヤに余裕があり、大消費地の東京に直結する。現在の国内物流ではトラックが主役だが、高速道路網が充実したとはいえ輸送速度は新幹線にかなわない。さらに人手不足で長距離トラックの運転手の確保が難しくなっており、輸送費も上昇している。生鮮食品のように新鮮なものほど高値で売れる商品では、トラック輸送から顧客を奪うのも不可能ではない。

今回の鮮魚輸送は実験段階だが、期待された成果が出れば忘れられた「貨物新幹線構想」が復活する可能性もありそうだ。そうなれば人口が少ないため着工のめどが立たない山陰新幹線や四国新幹線が、高速貨物輸送線として注目されるだろう。

そもそも在来線も、その多くは貨物輸送を目的に建設されている。日本国有鉄道(国鉄)の破綻も旅客輸送ではなく、自動車シフトによる貨物輸送減少の影響が大きかった。新幹線が貨物輸送の役割を担うようになれば、鉄道の未来も大きく変わるに違いない。

文:M&A Online編集部