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【公認不正検査士協会より】新型コロナが企業の不正に与える影響

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3.企業の回復力の差

「財務諸表不正」については、回復局面に入ると企業ごとの差がはっきり出るため経営者にプレッシャーとなり粉飾リスクが高まるということは先ほど述べた通りですが、企業の回復力について興味深い調査結果があります。

前回の経済危機時であるリーマンショック時に売上10億ドルを超える上場企業1100社を調査したものですが、この調査結果によるとリーマンショックを挟んだ2007年~2011年の間に「業績を大きく伸ばした企業群」と逆に「業績が停滞した企業群」があり、その差はリーマンショックの景気収斂期の前半ではほどんど差はなかったものの、景気収斂期の後半から徐々に差が開き、その後の回復期(2009年~2011年)で大きく差が広がっていることがわかりました。

つまり、経済危機の初期には、どの企業も危機の影響を大きく受け、同じような割合で売上を落とすものの、危機から少し時間が経った時にその回復・挽回の速さで大きく差が付くということです。

さらに興味深いことに2011年~2017年にその後の業績の追跡調査をしてみると、回復期に大きく開いてしまった2つの企業群の差は2度と縮まることなかったとのことです。危機からの挽回力がその後長い期間の業績に影響を与え続けるという結果になりました。(以上、ハーバードビジネスレビュー 2021年2月号「永続的に成長するリジリエントカンパニーの条件」より抜粋)

今回の新型コロナにおける危機でも1回目の緊急事態宣言下の2020年4月~6月にはほとんどの企業で売上が大幅に落ち込みました。この期間は、どんな企業においても想定をしていなかったであろう全世界での物流、人流のストップ、店舗の閉鎖等によるものでした。そこは危機の前半ですからそれほど大きな差はありません。ところがこの危機の間に何を考え、どのように対応したのかでその後の回復の速さにはおそらく差が出てくることになるでしょう。

もちろん業種による差異もあるでしょうから一概には言えませんが、「コロナでは仕方がない」とじっと通り過ぎるのを待っているだけの企業と、「ピンチは変化のチャンス」と従業員、取引先一丸となって取り組んできた企業とでは次の1年で決算数値には大きな違いが出てくるのかもしれません。

文:辻さちえ(公認会計士・公認不正検査士)

株式会社ビズサプリ メルマガバックナンバー(vol.129 2021.2.17)より転載

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