米EV電池交換ベンチャーの大型調達にENEOSが出資した理由

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EVの普及が「リスク」にも

一方、第二の電池形状の問題はクリアされていない。これから統一規格ができる可能性はあるが、現行のEV充電器規格でさえ日本のCHAdeMOやEUのCCS(Combo)と北米のCCS*、中国のGB/T、それにテスラのスーパーチャージャー(SC)を加えると5種類もある。車載電池となると、車体のデザインや基本設計に関わるだけに一致点を見つけるのは難しそうだ。

さらにアンプルにとってEVの普及は「追い風」であると同時に「リスク」でもある。EV生産台数の増加に伴う技術革新で超急速充電が可能になれば、安価な充電装置で用は足りる。脱着装置や自動倉庫、大量の交換用電池が必要なEVステーションよりも低コストで済む。

ガソリンと違い、電気はどこでも供給ができる。電池性能が向上すれば、一日中走行して夜間だけ充電すれば十分という使い方が主流になるだろう。携帯電話もガラケー時代はユーザーが裏蓋(ぶた)を開けて電池交換できるモデルがほとんどだったが、リチウムイオン電池の性能向上によりスマートフォンでは入れっぱなしで交換できないモデルが主流になっている。

六本木でEV用電池交換の実証実験に取り組んだベタープレイスは約10億ドル(約1100億円)の調達にこぎつけたが、2013年に清算された。ただし、当時のEV乗用車保有台数は世界で22万台にすぎなかったが、国際エネルギー機関(IEA)によると2020年には1020万台と急増しており、状況は全く異なる。

1億6000万ドルの資金調達に成功したアンプルだが、このまま「順風満帆」で事業が継続できるかどうかは未知数だ。

*EUと北米のCCSが同じ規格だが、充電コネクターの形状が異なる。

文:M&A Online編集部

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