大学発ベンチャーの「起源」(37) アムノス

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経済産業省がまとめた2020年度の「大学発ベンチャー設立状況調査」によると、都道府県別では富山県が3社と最小だった。同県は2014年度から7年連続で全国最下位に甘んじている。だが設立社数は少ないものの、ハイレベルな企業も存在する。富山大学発ベンチャーのアムノス(富山県朝日町)も、その一つだ。

組織再生能力を損ねない乾燥技術で差別化

アムノスは2014年1月、富山大学の二階堂敏雄教授らの研究に基づいた胎児由来のハイパードライ(HD)羊膜の事業化を目的に設立された。羊膜は免疫原性がないため拒絶反応が生じず、やけどや傷などの治療のほか、角膜の再生を促進する医療用生体材料として注目されている。

医療用生体材料として注目されているヒト由来組織の羊膜(同社ホームページより)

すでに米国などで医療用の凍結乾燥羊膜が販売されているが、凍結乾燥工程の影響で組織再生促進能力が低下するという問題があった。アムノスは赤外線とマイクロ波を組み合せた特殊な乾燥技術を開発し、生羊膜に極めて近いHD羊膜の製造に成功している。

ユニークなのは同社設立の経緯だ。大学の研究者が立ち上げたのではなく、富山県主導の産学官医工連携企業として、広島県福山市のポエック<9264>と、地元の朝日町に工場があるTSS(東京都大田区)の県外2社が連携してアムノスが設立された。アムノスの現社長はTSSの田中淳社長が兼任している。

TSSは精密機械製造、ポエックはポンプ機器販売と畑違いの企業ではあったが、医療機器分野への進出をにらんでアムノスの起業に参加した。2017年4月に朝日町内にISO7以上のクリーンルームを備えた乾燥羊膜製造工場が完成している。

2018年11月に米国食品医薬品局(FDA)に登録、2019年4月には韓国に現地法人Amnos.Korea Co., Ltdを設立するなど、海外展開にも積極的に取り組む。大学と県外企業とのコラボレーション(協業)で起業した珍しい大学発ベンチャーだけに、今後の展開が注目される。

文:M&A Online編集部

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