米EV電池交換ベンチャーの大型調達にENEOSが出資した理由

alt

電気自動車(EV)用電池交換サービスの米Ample(アンプル)が、シリーズCで同社としては過去最高の1億6000万ドル(約176億円)を調達した。日本企業ではガソリンスタンドを全国展開するENEOSホールディングス<5020>が出資している。これまでのアンプルの資金調達総額は7000万ドル(約77億円)なので、同社事業への期待が高まっていることが分かる。

「充電時間の呪縛」からEVを解放

アンプルのビジネスモデルはシンプルだ。EVスタンドに充電済みの電池を保管しておき、残量が少なくなったEVが入庫すると倉庫から充電済み電池を自動搬出し、ボディー底面から自動交換する仕組み。EVから抜き取った電池は倉庫へ自動搬入して充電する。現在、電池交換におよそ10分かかっているが、年内に半分の5分に短縮するという。

EVの「致命的な欠陥」とされる充電時間の長さを解消できるサービスとして、以前から同様の事業構想はあった。日本でも2009年にEVベンチャーの米ベタープレイスと日本交通(東京都品川区)が六本木ヒルズ(東京都港区)内に設置した電池交換ステーションで、EVタクシーの電池交換試験を実施している。

電池交換が当たり前になれば、EVの「充電時間問題」は解決する

EVステーションでの電池交換が普及しなかった理由は、第一にEVの普及が進まなかったこと、第二にEV用電池の形状がバラバラで全ての車種をカバーできなかったことにある。ここに来てアンプルが注目されている背景には、EV販売台数の急増がある。

一方、ハイブリッド車(HV)やガソリン車の燃費向上に伴う売上減で、閉店が相次ぐガソリンスタンドにとっても、新たなビジネスチャンスになる。ガソリンスタンドはEVステーションへの改装が容易で、アンプルのシステムならば自動交換だから現在のセルフスタンド同様、人手もかからない。ガソリンスタンドにとってEVステーションは、本格的なEV時代が到来した場合の「生き残り策」になりうる。

石油を必要としないEVは「不倶戴天の敵」であるはずのENEOSやタイ国営石油ガス会社のPTTが、アンプルに出資しているのもそのためだ。ENEOSは2021年6月にアンプルと提携し、日本国内で配車サービスやタクシー、レンタカー、自治体などを対象にEVバッテリーの自動交換装置を試験導入すると発表した。

NEXT STORY

EVに「乗り遅れる」自動車メーカーが使う三つのキーワード

EVに「乗り遅れる」自動車メーカーが使う三つのキーワード

2021/07/24

脱ガソリン・脱ディーゼルの流れがはっきりしてきた。世界でEV化へ向けた動きが加速している。しかし、まだ不透明な部分もあり、自動車メーカーのEV対応には温度差がある。実は「EVシフト」に消極的なメーカーが好んで使う三つの「キーワード」がある。

関連のM&Aニュース