【中小企業のM&A】コロナ禍で2021年のM&A業界はどうなる?

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コロナ禍が続く世界、そして日本の行方は…(写真はイメージです)

新型コロナウイルスの感染拡大で企業業績の見通しには不透明感が漂っている。政府支援や無利子・無担保融資によって当面の資金繰りは凌いでいるが、感染拡大の深刻化や想定以上の長期化となれば、中小企業は再び資金不足に陥りかねない状態であることは常に注意しておく必要がある。

救済型M&Aが増加する

中小企業は生き残り、最善策を懸命に模索している。現下の危機的な状況を打破する戦略の一つとして「救済型M&A」の増加が予想される。

救済型M&Aは大きく二つに大別される。一つは「法的整理」、もう一つは「私的整理」である。特に私的整理は「時間との戦い」の側面が強く、専門性と気概を持ったアドバイザーや弁護士の適正な関与が重要なポイントとなることを記しておきたい。

そして、私が考える救済型M&A成功の秘訣として、①一定規模以上の年商(3億円以上)の必要性、②スポンサー企業の探索のセンス、③売手企業経営者の柔軟な対応力-の3つを挙げておきたい。

経営者は最終的には経営責任を問われるが、個人として生き残る策はいくらでも残されている。破産などによる企業ダメージを最小化し、経営者人生の最後を誇りあるかたちで手仕舞いしてほしいと常々思っている。

今まで経験したことがない困難の中で会社を畳む手段がなく途方に暮れている経営者に現状を打破し、かつ経営者人生を勇退に導くことができるツールとして「救済型M&A」があるということを経営者の方々にはまずは知って頂きたい。

今後のM&A市場を巡るテーマは?

不確実性が高い経済環境において、将来の事業成長機会を先取りしたM&Aを実施するためには、限られた経営資源を確実にリターンにつなげることが求められる。

1.同業間の合従連衡・異業種との連携

地域や地元経済への影響力を持ち、かつ抜本的な事業再構築を選択しにくい業種は今後の生き残りをかけて同業種間での合従連衡を進めていくことが有効な手段となるだろう。ある程度の資金余力があるうちに持ち株会社化による縦横展開を進める。これにM&Aを絡めていくことは非常に効果的である。私見としては自動車産業や鉄鋼業、建設関係や金融(銀行、証券)、不動産、これらは遅かれ早かれこの合従連衡・連携となっていく業種である。

2.デジタル技術による既存事業の強化、または新規事業の創出

デジタルへの対応については大半の企業の苦手とする分野である。しかし、この動きは今後、全業種に及ぶと言っても過言ではない。スタートアップ企業との「オープンイノベーション」と「共創」を目的としたM&Aの活用はオールド企業を中心に有効な手段となると考えられる。大企業のことのように思う中小企業経営者もいるかもしれないが、これは中小企業にとってもしかり。早く取り組むべき項目だと思う。

3.小規模M&Aにおける「仲介」問題

あえて「問題」と書いたのだが、もともと私はM&Aに関して「仲介」は反対派である。理由は、この日本独特の「仲介」というシステムにはどこまで行っても「利益相反」が付きまとうからである。

特に中小企業はM&Aに関する知識や経験が希薄なため、仲介業者が提示する価格の妥当性を見極められない。これが、利益相反を生み出す要因となっていると思われる。現在、M&Aの仲介業者を規制する業法がないため、法整備を進めるべきとの意見も以前からある。

しかし、中小企業オーナーの急速な高齢化で日本全体として「事業承継待ったなし」の機運が高まる中、国主導による厳格なルール整備は事業承継を大幅に遅らせることにもなりかねないので、「中小M&Aガイドライン」を提示する程度にとどまっているのが実態である。

中小企業のM&Aを取り扱う仲介業者数は年々増加しており、それに比例して苦情や批判が増えることも予想される。今後はM&A業務のビジネスモデルの在り方についても議論されるべきだと思っている。 

業績が良い譲渡案件は減る

今年からは債権者(金融機関)にも配意が必要となるM&Aが増えてくることが予想される。業績が良い譲渡案件は減る代わりに、赤字や債務超過の相談が増えてくるのは間違いない。一筋縄ではいかないかもしれないが、だからこそ我々専門家は依頼者の想いに寄り添いながら、たとえ表面的には「塩対応」と苦言を呈されても、ベストなAnswer(解)を導き出せるよう今年も不断の努力が必要なのだと肝に銘じている。

文:Antribe社長 小林 伸行(M&Aアドバイザー)

M&A Online編集部

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