M&Aの成立に不可欠なアドバイザーと仲介者。彼らの行動やモラルが問題になるケースに出くわすことがある。特に多いのが中小企業間でのM&A。いつの時代にもそういった方(輩)はいる…言ってしまえばそれまでだが、今一度、案件への取り組み姿勢や考え方について記しておきたい。

【コンフリクトマネジメント】書面で明文化

まず、仲介者という立場においてはオファー(売手)・ビッド(買手)間において利益相反があることは紛れもない事実。利益相反が良いとか悪いとかでなく、利益相反にあたるということを理解して、かつ売手、買手の両当事者に了解を得たうえでディールに取り組まなければならない。

(1)仲介契約にあたることを(両当事者から手数料を受領することを)書面をもって確認する。

(2)バリエーション(企業価値評価)とDD(デューデリジェンス、資産査定)は自らが行わず、必要に応じて他の士業専門家等の意見を書面にて残しておく。

(3)あらかじめ利益相反のおそれがあると想定される事項について両当事者に対し書面をもって説明を行う。また、ディール中に利益相反のおそれがある事項を新しく認識した場合には、その時々でこの点に関する情報を明文化し両当事者に明示すべきである。

私の経験では、この(3)ができてない仲介者が多いことがトラブルの根底なのではないかと推測する。もちろん、リピーターとなり得る買手の利益を優先してディールをまとめたがるケースや、リーマン方式(売買金額に応じて成功報酬を決める方式)で手数料を計算するため不当に売買金額を高く見積もるケースなどは全くをもって論外である。

【専任条項】セカンドオピニオンに支障のない範囲で

譲渡側がアドバイザーや仲介者と結ぶFA(ファイナンシャルアドバイザー)契約、仲介契約において、他の同業者への依頼を行うことを禁止する条項が設けられるのが一般的である。これは、必要以上の譲渡情報拡散防止や、同一の譲受候補先への複数の専門業者からの重複打診回避の観点から一定の合理性が認められることは確かである。

しかし、譲渡側が契約した専門業者に疑義を持った時や、セカンドオピニオンさえも求めることができないとなると、アドバイスの妥当性や適切な判断に支障をきたすケースも十分にありうる。このため、専任条項を設けるにしても対象範囲を限定したり、法令上または契約上の秘密保持義務がある者にはセカンドオピニオンについては許可をする等の対応がなされるべきであろう。

また、専任条項の契約期間は6カ月~1年以内を目安として定めるべきであるというのが筆者の意見である。もちろん、依頼者が任意で契約を中途解約できることも明記すべきである。

【テール条項】最長でも3年以内が目安

テール条項とは、当該契約は終了しているにもかかわらず、譲渡側とM&A業者の間で、契約終了後の一定期間内に譲渡側が譲受側との間でM&Aを行った場合でも、当該M&A業者が手数料を取得することができるという条項である。

これは、顧客が手数料逃れのためにあえてM&A業者との契約を終了させ、その後にM&Aを成立させることを防ぐことを念頭におかれた規定であり、それ自体には一定の合理性が認められる。とはいえ、テール期間が長すぎると自由な経営判断を損なう恐れも否めない。よって、最長でも3年以内を目安とすることが望ましいと筆者は考える。

それと、テール条項の対象者はあくまで当該M&A業者が関与した先と、譲渡側に紹介した譲受候補先のみに限定すべきである。時々あるのだが、テール条項の対象者を「無限定」とするなど常識外れもいいとこである。

これを読んだM&A事業者の皆様、これを機に御社の契約書類についても今一度読み返してみてはいかがでしょうか。コロナでも? コロナだからこそ? できる仕事はたくさんあるはずです。

文:Antribe社長・小林伸行(M&Aアドバイザー)