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ニトリ、DCMがTOBで奪い合う「島忠」ってどんな会社?
ホームセンター中堅の島忠が2020年11月16日、同業大手のDCMホールディングスと合意していたTOBへの賛成を撤回し、代わってニトリホールディングスの買収提案を受け入れた。両社から「ラブコール」を送られた島忠とは、どんな会社なのだろうか?
海洋土木大手の東洋建設をめぐるTOB(株式公開買い付け)の行方が混とんとしてきた。前田建設工業を中核とするインフロニア・ホールディングスによるTOBが進行中だが、任天堂創業家の資産運用会社「ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス」(YFO、東京都港区)が待ったをかけたのだ。
YFO傘下の投資会社3社がすでに東洋建設株の26%余りを取得して筆頭株主に躍り出ており、このままでは買収合戦が避けられそうにない。
渦中の東洋建設は4月22日に、YFOから買収提案を受けたと発表した。YFOは東洋建設株1株あたり1000円の買付価格を提示した。インフロニアによる770円の買付価格について、「(東洋建設の)潜在成長力に照らせば、市場価格を反映していない低い金額だ」としている。
インフロニアは3月23日、20%強の株式を持つ東洋建設の完全子会社化を目的にTOBを始めた。買付代金は最大579億円。ところが、東洋建設の株価はTOB開始直後から終始、買付価格を上回る高値圏で推移。4月25日の終値は972円で、買付価格の770円とはほぼ200円の開きがある。
つまり、大半の株主にとってインフロニアのTOBに応じるよりも市場で売却した方が有利で、現状の株価が続けば、5月9日を期限とするTOBの成立は絶望視される。こうした状況下、対抗的TOBに参戦の名乗りを上げたのがYFOというわけだ。
東洋建設株をめぐり、「WK1」「WK2」「WK3」というケイマン諸島籍の投資会社3社が5.84%を新規保有したことが判明したのはインフロニアがTOBを開始した直後の3月末。WKが関東財務局に提出した直近の大量保有報告書によると、4月19日時点の保有比率は26.28%まで上昇している。
ここまで株式の取得金額は計198億円に上るが、WSに出資するのがYFO。WSは100%YFOの資金で運用されているという。今後、TOBで東洋建設の残る73%強の株式を買い付ける場合、約700億円を要する計算となる。
YFOは任天堂創業家出身で、同社を世界的ゲーム企業に押し上げた山内溥元社長(故人)の孫の山内万丈氏が設立。フィランソロピー(社会貢献活動)事業、インキュベーション(起業支援)事業とともに、投資事業を展開する。
では、YFOはTOBを実施に移すのか。YFOは「敵対的なアクションを企図しているものではない」とし、東洋建設取締役会がTOBに賛同することを実施条件とする意向だ。4月中にも両者の面談による協議の場が持たれる見込み。ただ、東洋建設の出方次第では敵対的TOBに発展する可能性もある。
一方、TOBを実施中のインフロニアは追い詰められたも同然の状態だ。そうでなくとも、今のところTOB成立が絶望的なうえ、買付期間の5月9日も刻々と近づいており、戦略の練り直しが待ったなし。買付期間の延長で時間を稼ぎつつ、買付価格の引き上げの具体化に向き合うことになりそうだ。
果たして、インフロニアとYFOの一騎打ちが待ち受けているのか。
もう一つ、注視されるのが旧村上ファンド系投資会社の動きだ。ひと頃、7.31%を保有し東洋建設の大株主として名を連ねていたのがレノ(東京都渋谷区)。インフロニアのTOB開始直後に約3分の2を売却し、保有比率を1.89%まで落としているが、状況次第では買い戻しに転じる可能性もあり、波乱を予感させる。
文:M&A Online編集部
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ホームセンター中堅の島忠が2020年11月16日、同業大手のDCMホールディングスと合意していたTOBへの賛成を撤回し、代わってニトリホールディングスの買収提案を受け入れた。両社から「ラブコール」を送られた島忠とは、どんな会社なのだろうか?