昨年、中小企業庁は、中小企業のM&A活用促進を目的とした「事業引継ぎガイドライン」を策定、「事業引継ぎハンドブック」にまとめた。また、これまで一部の地域で展開していた「事業引き継ぎ支援センター」を全都道府県に展開、M&Aを活用した中小企業の事業承継を後押しする体制を敷いた。国が事業承継に力を入れる理由はどこにあるのだろうか。また、どこまでサポートしてくれるのだろうか。東京都事業引継ぎ支援センターのプロジェクトマネージャー木内雅雄氏に伺った。

――事業承継の相談に訪れるのは、
   どのような会社が多いのですか?

 例えば昨年度は、新規の相談社数は636社ですが、そのうち譲渡側の相談が344社、譲受(買収)側の相談が292社になります。また、譲渡側の相談企業を売り上げ規模別に見ると、1億円以下が36パーセント、1~3億円が30パーセント、つまり、3億円以下が3分の2を占めています。

 また、センターが相談を受けた企業で、昨年度、譲渡が成約した企業は32社でした。この中の6社は、民間のM&A支援会社に紹介して、成約に結び付きました。残りの26社のうち、センターが譲受企業を引き合わせしたのは6社。残りの20社は、相手先がいる状況でセンターに相談に来た企業でした。

 ちなみに、譲渡相談者の内、約25%は、後継者が決まっていないなど将来の課題を見据えて早めに相談に来た企業で、約4割は相手先がある相談者です。

――最後に、オーナー経営者に対する
   アドバイスをお願いいたします。

 事業承継の問題は、今日何かしなければたちどころに困るものではありません。しかし、1日でできるものでもありません。長いスパンで取り組むべき課題です。ところが、中小企業の経営者は大変多忙ですから、つい後回しにしがちです。しかし、ひとつだけ確実に言えるのは、経営者に何かあってからでは遅いということです。仮に社長が倒れて会社の業績が下がれば、会社の譲渡は難しくなってしまいます。

 忙しくて準備の暇がないという経営者も、大まかなスケジュール感だけでも把握しておきたいものです。まずやるべきことは、「親族に候補はいるか」「従業員に候補はいるか」という2点を見極めることです。これだけで場合によっては数年かかりますし、その後、第三者への譲渡の方針を固めてからも、適当な譲渡候補先の選定や、譲渡候補先との交渉に数年単位の時間を要することも珍しくありません。

 よく言われることですが、事業承継は社長になったその日から始まります。従業員、取引先、ご家族にも迷惑が掛からないよう、できることから早めに着手しておきたいものです。(完)

取材・文:M&A Online編集部

第1回:「事業引継ぎ支援センター設立の背景」を読む

第2回:「事業引継ぎ支援センターの具体的なサポートの仕組み」を読む

第3回:「譲受候補について」を読む