経営者向け M&A相談所 その時、どうする?

実際にあったM&Aの現場から参考になりそうな事例を紹介するシリーズ。今回は、工事会社を経営するAさんの「息子が会社を継ぐ意思がない。どう説得したらよいか?」という事業承継で悩むケースを取り上げてみます。

父から受け継いだ会社を息子に継がせたいが、本人にその気がない。説得する方法はありますか?

私は、地方都市で創業50周年を迎える工事会社を経営しております。創業者で現会長の父親から、20年ほど前に会社を継ぎました。私は現在63歳、息子は29歳です。

息子が都心の大学を卒業後、経験を積む意味で近い業界の大企業に就職したところまでは良かったのですが、順調に出世を重ね、家庭を持ち、孫も生まれてからは、地元に帰って会社を継ぐよりも、安定した人生を歩むために今の会社に残りたいと話すようになりました。父が創業した会社を残すためにも息子を何とか説得したく、アドバイスをいただけませんか。(福島県管工事業Y・Tさん)

 ステークホルダーそれぞれの「幸せ(利益)」を実現する方法を考えてください。

父親と自分が手塩にかけて育てた会社を息子に託すのは、経営者の夢の一つだと思います。ただ、ご相談者様のように、ご子息が別のお仕事をされていたり、お子様がご息女だけで嫁いでいかれるケースも往々にしてございます。一方で、会社は多くの方が関わる社会の公器であり、後継者は社長とご子息だけの問題ではありません。従業員や取引先、金融機関などの利害関係者(「ステークホルダー」といいます)、全員にとって大きな問題です。

そこで、事業承継におけるステークホルダーの「幸せ(利益)」を整理してみます。

事業承継におけるステークホルダーの「幸せ」とは…

ステークホルダーの「幸せ」とは…

★をつけたのは、ご子息が後継者とならないと実現できない幸せです。そのほかは、親族外の承継であっても、社長様がきちんと後継者を選定すれば実現可能なものです。

ご子息でなければならないものが、思ったより少ないのではないでしょうか?

また、社員や株主、取引先、金融機関の立場で「幸せ」を考えてみると、ご子息に承継することが決して最適解とは限らないことがおわかりになると思います。

ご子息のご意思はもちろん、経営能力も課題になるためです。ご相談者様のケースでは、まずはご子息と何度もお話し合いを持たれることをお勧めします。

その際、上記のような皆様の「幸せ」とともに、サラリーマンとは別次元の経営者が背負わねばならない重い責任などのデメリットもきちんと説明した上で、双方が納得できるようにご判断すべきです。

その上で、ご子息が後継者として会社を受け継ぐと決断なさるのであれば、きっと素晴らしい後継者になれると思います。