【不動産登記編】法定相続情報証明制度のメリットを教えて

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公開日:2017年05月01日

司法書士 大越一毅

~法定相続情報証明制度の新設~

Q:私の父が先日亡くなりました。父は複数の不動産・預金(預金口座)・有価証券(証券口座)を有していましたが、遺言は無く、相続人である私も含めた子供らで協議した結果、私は、いくつかの不動産と預金(預金口座)を相続することになりました。
不動産に関しては売却予定もあるので、なるべく早く全ての不動産を私名義とし、銀行預金の払戻し手続も完了させたいと考えていますが、何か良い方法はありますでしょうか?
法定相続情報証明制度が新設されたと聞きましたが、具体的にどのようなメリットがあるでしょうか?

A

1.相続手続には時間がかかることが多い

 最近では、相続人間での遺産争いを防ぐ目的で、被相続人(=亡くなられた方)が遺言を作成しているケースは増加傾向にありますが、当方の経験則上、まだまだ本事例のように、遺産が相当数あるにもかかわらず、遺言を作成せずに亡くなられるケースも少なくありません。
 その場合には、相続人全員(法律上、被相続人の遺産を承継する権利のある方)で、遺産分割協議を行い、誰がどの財産を承継するのかを決める必要があります。
 そして、遺産分割協議が成立したら、協議内容を記載した遺産分割協議書を基に、各遺産につき、名義変更や解約による払い戻し手続を行います。
 遺産分割協議が成立すれば、名義変更等の手続は1~2週間程度で直ぐにでも簡単に完了すると思っている方も少なくありませんが、実際には遺産分割協議書以外にも不動産であれば法務局・預金(預金口座)であれば銀行・有価証券(証券口座)であれば証券会社と、それぞれの窓口ごとに様式の決まった書類を提出する必要があり、煩雑です。
 また、証券会社など、相続手続の申請をしてから完了までに1ヶ月以上かかるところもあり、遺産が複数種類ある場合には、相続手続の依頼を受けてから、全ての遺産の承継手続が完了するまでに、4ヶ月~半年近く要するケースも少なくありません。遺産分割協議で揉めてしまった場合には、調停や裁判が必要になるケースもあるでしょうから、その場合にはさらに時間を要することになります。

 このように相続手続には時間を要しますが、その要因の一つに、法務局・銀行・証券会社の窓口に、それぞれ被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本及び相続人の戸籍謄本(以下総称して「戸籍謄本等」といいます。)の原本の提出が必要なことが挙げられます。
 戸籍謄本等の原本は、どの窓口も手続完了後に原本を返却してもらえますが、原則として手続申請中は、当該窓口に原本を預けたままになります。
 したがって、例えば法務局に相続登記申請をしている間は、戸籍謄本等の原本が法務局にあるため、相続登記手続が完了するまで、銀行へ相続手続申請をすることができず、順次行う必要があります。
 そのため、同時並行で全ての相続手続を進められれば時間短縮が可能であるにもかかわらず、それが難しいので、複数種類の遺産に係る相続手続には、時間を要するケースが多いです。
 同じ戸籍謄本等を複数通取得すれば、複数の窓口に戸籍謄本等の原本を同時に提出することが可能となるため、本事例のようにどうしても急ぎで相続手続を進めたい事情がある場合には、そのような手法を選択することも考えられますが、あまりお勧めしません。
 戸籍謄本等を複数通取得するということは、戸籍謄本等を取得するための費用が2倍以上かかることになりますし、いずれも手続完了後には原本が返却されるため、個人情報として管理や廃棄が容易ではない戸籍謄本等の原本を大量に相続人の方が保有することは、好ましいことではないと考えるからです。

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