M&Aで分割支払いはできますか?
一度M&Aの契約を結んだら、もう元には戻れません。支払いは極力、分割払いを避け、将来の不安を残さないように交渉することをおすすめします。
公開日:2017年02月01日
司法書士 大越一毅
Q:当社は子会社に事業を一部分割承継させる吸収分割を行う予定ですが、簡易分割・略式分割の要件を満たさないため、当社・子会社とも株主総会で吸収分割の承認決議を行う予定です。
株主リストの作成者は誰になるでしょうか?
また、吸収分割に際して、子会社の商号変更や代表取締役変更も行う予定です。
株主リストの作成に関して、注意点はあるでしょうか?
A:
平成28年10月1日付で商業登記規則が改正され、株主総会議事録の添付が必要な登記申請には、株主リストも併せて添付することが必要になりました(株主リストの詳細については、登記相談Q&A第41回をご参照ください。)。
改正から4か月経過しましたが、それまでの間にさまざまな実務上の問題点があり、当方も法務局との協議等を何度もしましたが、その中で代表的な問題点として、組織再編時の株主リスト作成者を誰にすべきか?という点があります。
つまり、合併や会社分割等の組織再編に係る登記申請をする際に、株主リストの作成名義人となる会社は、当事会社のうち、いずれの会社にすべきなのか?という点です。
この点、改正直後は、様々な意見や法務局ごとに見解の相違があり、実務が混乱しましたが、この度、司法書士会から法務省に正式な照会がなされ、法務省から回答があったため、実務の運用が統一されました。
その結果、組織再編行為ごとの株主リストの作成者は、以下のとおりとなります。改正直後の実務の運用と異なる箇所もありますので、ご注意ください。
なお、簡易分割や略式分割等、株主総会決議が不要な場合には、株主リストを作成する必要がありません。
組織再編の種類 | 株主リスト作成者 | ||
合併 | 吸収合併 | 存続会社分 | 消滅会社分 |
存続会社の代表取締役 | 存続会社の代表取締役 | ||
新設合併 | 設立会社分 | 消滅会社分 | |
不要 | 設立会社の代表取締役 | ||
会社分割 | 吸収分割 | 承継会社分 | 分割会社分 |
承継会社の代表取締役 | 分割会社の代表取締役 | ||
新設合併 | 設立会社分 | 分割会社分 | |
不要 | 分割会社の代表取締役 | ||
株式交換 | 完全親会社分 | 完全子会社分 | |
完全親会社の代表取締役 | 完全子会社の代表取締役 | ||
株式移転 | 完全親会社分 | 完全子会社分 | |
不要 | 完全子会社会社の代表取締役 | ||
組織変更 (株式会社➝合同会社) |
合同会社分 | 株式会社分 | |
不要 | 合同会社の代表社員 |
一度M&Aの契約を結んだら、もう元には戻れません。支払いは極力、分割払いを避け、将来の不安を残さないように交渉することをおすすめします。
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会計事務所を経営しています。体裁のために地元以外で事業譲渡したいと顧問先企業から相談を受けたのですが、この場合、誰がM&A相談を受けるべきでしょうか。