高齢化社会におけるM&Aの心得について、相続・成年後見関係の手続きを数多く手掛ける弁護士・西浦 善彦氏に話を聞きました。

今回は、知らないと無効になる可能性もある増資と株券の善意取得についてです。相続によるも認知症も、正統な権限を持っていない者と契約してしまうことがあります。後で無効となりM&Aが覆されないためには、何に留意してチェックすべきでしょうか。

増資と株券の善意取得

相続によるも認知症も、正統な権限を持っていない者と契約してしまうことがあります。後で無効となりM&Aが覆されないためには、何に留意してチェックすべきでしょうか。

<Case4>認知症の大株主に株主総会の招集通知を送付したが、欠席。株主総会第三者割当増資の決議が通った。

経営権を獲得する方法の一つに第三者割当増資がありますが、第三者割当増資を実施する際、大株主が認知症だと、株主構成によっては総会の決議要件を満たさない場合があります。何か対処法はありますか?

■このような場合のために、会社法上の株主保護の仕組や株式買取請求権があります。ただ大株主が認知症だった場合、その方の既存株式の価値の保全が必要になりますが、その方は買うか買わないか判断できません。そのため、株式買取請求権の行使の際にもやはり成年後見が関係してきて、手続きを経ておかないと無効になるので注意が必要です。

認知症の株主に株主総会の招集通知を送付し、当該株主が欠席扱いで行われた決議に基づき第三者割当増資を実行した場合、当該増資の効力は有効なのでしょうか。

■Case4の場合、まず招集通知の有効性が問題になる場合があります。株主が認知症の場合、受領能力もないと判断される可能性があるからです。

招集通知は、単なる開催の告知という事実上の効果であると共に、株主総会の開催要件です。そのため、増資自体はできたとしても、株主総会決議の効力を争割れる可能性があり得ます。大株主が成年後見人を立てていない場合は、成年後見人が就任した後、無効だと主張することになります。

そうすると増資の効力が問われることにもなってリスクですね。場合によっては株主総会の決議のあり方が不公正だったということにもなりうるわけで、結局安全にやるならば成年後見人を立てましょうという結論になるのでしょうか。

■持ち株が数%程度であればさほど問題ありませんし、40%といった会社法上の権限行使ができる割合の株式数を保持している場合、株主総会の有効性に大きな影響が出てくると思います。特に同族会社などでは、会社の他の株主としても認知症であることを把握しながら、あえて株主総会決議を行うようなケースは実際問題としてあるのではないでしょうか。

窓口となっている息子さんに通知をして、現実には、本人が出席せず、息子さんが代理人として出席するといった段取りをつけといった場合です。このように代理人を立てるとしても、ご本人が判断できない状態であるわけですから有効な議決権行使とは言えません。