Q:M&Aの株式価値評価と自社株式の相続税評価の違いは?

 同族会社で30年以上、食品卸業を営んできました。一度も赤字にすることなく、それなりの規模まで成長させたことは自慢です。後は息子に会社を承継させるため、顧問税理士に相続税について相談していましたが、突然に息子が病気になってしまいました。

 回復に相当な時間がかかるため、外部の会社に譲渡することも考えています。顧問税理士に自社株式の相続税評価額を計算してもらっていますが、知人から「M&Aの場合はもっと高く売れる」とも言われています。両者はどう違うのでしょうか?(福岡県 K・Nさん)

A: M&Aの株式価値評価は、相続税評価の510倍になることも

 一般的に、M&Aで株式を譲渡する場合の価額は、相続税評価額より高くなります。私が以前に担当したケースでは、相続税評価額の10倍で会社株式を譲渡したオーナー経営者もいます。また、債務超過の会社が5億円で譲渡されたケースもありました。どちらのケースも、オーナー経営者からは「想定外」という言葉をいただきましたが、実際には意外なことではありません。

 そもそも、「相続税評価」と「M&Aの株式価値評価」には、決定的な違いが3つあります。

◆目安となる評価額を算定するベクトルの違い

→相続税評価は安く、M&Aの株式価値評価は高くなる

 親族内で事業を承継する場合、相続税を低く抑えるため、株式価値を低くすることがよくあります。不動産や保険商品を活用し、自社株式の相続税評価額を下げる会社も少なくありません。

 一方で、M&Aによって株式を外部に売却する場合、オーナー経営者は、売却金額の目安となる株式価値が高くなることを望まれます。

 このように、相続とM&Aでは株式価値評価の向かう方向性が異なります。そして、その違いが評価額の差となるのです。