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赤字家業を継いだ元東レ社員 オーダースーツでV字復活(中)

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オーダースーツ直販で生き残り

 起死回生の策は海外生産と小売り。下請け工場から脱却し、直営店で注文を受けたオーダースーツを中国の北京で作って日本市場で安く売るというビジネスモデル。中国・北京の製品が売れるということを証明したかったのだと佐田さんは言う。

 だが、この小売りまで手がける再建策は、製造業から川下の小売業に転換するようなもので、テーラーの社長たちから「佐田は敵になるのか」と猛反発を受けた。顧客の卸先に謝罪し、何とか了解を取り付けた。この路線の大転換が功を奏し、売り上げは右肩上がり。

 さらに神風が吹いた。小泉政権時代の不良債権処理。金融機関との話し合いで巨額の借金は棒引きに。ところが、またしても新たな問題が発生。再建の過程で簿外債務という名の隠れ借金が明るみになったのだ。未払い賃金もかなりの額になっていた。

 銀行との協議の結果「佐田家が腹を切るなら会社は残す」という話になった。結局、その責任を取らされる格好で2008年、佐田さん親子は経営から身を引いた。

 またサラリーマンに逆戻り。IT企業の上場支援を行う会社に転職。ここでも苦難が待ち受けていた。リーマンショックで会社そのものが外資に身売りされ、1年間勤めただけで中堅の経営コンサルタント会社に再就職を余儀なくされた。上場企業の役員や部長クラスなどマネジメント層の教育事業がメーンの会社だった。

 新しい仕事に取り組んでいたところへ、なんと2011年3月、古巣の株式会社佐田から「戻ってきてくれませんか」という電話が入った。一度追放した経営者に戻ってほしいという通常ではあり得ない要請である。

 東日本大震災が発生して仙台工場が被災、売上が3分の1に激減、再び営業赤字に転落していた。周囲の友人知人は「止めた方がいい」と猛反対。だが「これを受けなかったら男がすたる」と2011年5月に、再び社長として舞戻った。

 だが、どうやって再建するのか。佐田さんが考えた2度目の再建策は「細々とやっていた小売りを本格化する」という原点回帰の路線だった。(次回(下)は1月17日に掲載)

前回の記事はこちらから

取材・文:大宮知信

大宮 知信 (おおみや・とものぶ)

1948年 茨城県生まれ。ジャーナリスト。政治、教育、社会問題など幅広い分野で取材、執筆活動をつづける。主著に『ひとりビジネス』『スキャンダル戦後美術史』(以上、平凡社新書)、『さよなら、東大』(文藝春秋)、『デカセーギ─漂流する日系ブラジル人』『お騒がせ贋作事件簿』(以上、草思社)、『「金の卵」転職流浪記』(ポプラ社)などがある。 


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「ビジネスマンをかっこよくする」が佐田のミッションだ。自身の会社を復活させるだけでなく、衣料品業界そのものを再生復活させたいと取り組んでいる。


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