2017年11月、東京・巣鴨の「マスミギャラリー」でちょっと変わった展覧会があった。会場が二つに分けられ、メインのスペースには比較的大きな立体作品が飾られ、隣りのスペースでは小さなブレスレットやペンダントなどのアクセサリーが展示されている。二人の作家による展覧会みたいだが、彫刻家・薬師寺一彦さん(49)一人の個展だ。
芸術家になる夢が破れて、普通の会社に就職したり実家の商売を継ぐというのはよくあるが、薬師寺さんは真逆のパターン。いったん継いだ家業を捨て、プロの彫刻家になった。
大阪府堺市出身。子供の頃から「仏師」に憧れ、父親と一緒に有名なお寺に行っても、「山門で仁王さんの絵を描いていた」というから、かなり変わった子供だったようだ。小学生のときに描いた叔父の肖像画をタブレット端末で見せてもらった。しっかりしたタッチで描かれていて、なかなかの腕前。
1948年 茨城県生まれ。ジャーナリスト。政治、教育、社会問題など幅広い分野で取材、執筆活動をつづける。主著に『ひとりビジネス』『スキャンダル戦後美術史』(以上、平凡社新書)、『さよなら、東大』(文藝春秋)、『デカセーギ─漂流する日系ブラジル人』『お騒がせ贋作事件簿』(以上、草思社)、『「金の卵」転職流浪記』(ポプラ社)などがある。