多額の「前受」計上し、営業CFは毎期プラス

実際にタブローのBSを見ると、多額の前受収益(Deferred revenue)が計上されていることがわかる。

さらに、タブローにおいては多額の株式報酬費用が計上されている。下表は、各費目に含まれている株式報酬費用の金額を表したものだが、直近期においては費用総額12億4500万ドルに対し、2億3900万ドルもの株式報酬費用が計上されていることになる。  

株式報酬費用は、PL上費用計上されるものの、現金流出が伴うものではないため、ここでもPLとキャッシュの間でズレが生じている。 これら前受収益と株式報酬費用の影響により、タブローはPL上毎期赤字となっているように見えるが、営業CF(キャッシュフロー)は毎期継続してプラスとなっている。

CRMとデータ分析の相乗効果を見込む

これを見ると、サブスクリプションモデルは投資を回収するのに時間がかかると言われている中で、すでに安定的に利益を出しているタブローは非常に優良な企業であることがうかがえる。有料課金ユーザー数は、17年12月末から18年12月末にかけて約7万→約8万6000となっており、多くの顧客を抱えながらもまだまだ成長を続けている。

冒頭で述べたとおり、今回の株式交換でセールスフォースはタブロー株1株につきセールスフォース株1.103株を割り当てる。株式交換の場合は会社からキャッシュが流出することはないものの、セールスフォースの株式には希薄化が生じることとなる。

それもあってか、買収発表後タブローの株式は約33%上昇した一方で、セールスフォースの株式は約5%下落した。ただ、セールスフォースとしては、タブローの買収によって希薄化のマイナス影響を上回るほどの企業価値を創出できると確信しているのだろう。

確かに、双方は膨大な顧客データを抱え、かつ、CRMとデータ分析というそれぞれ相関性の高い強みを持つことから、大きなシナジー効果を見込むことは十分に可能と考えられる。その上、タブローはすでに営業CFが黒字かつ大量のキャッシュを抱え、PLも黒字化が近いことから、セールスフォースの連結業績にもプラスの効果をもたらすだろう。

文:M&A online編集部