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ふさわしい方法で利益を得る|M&Aに効く論語4

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複雑な現代では目先を追う場面もある

BrianAJackson/iStock

 これからM&Aを進めていくときに注意すべきことを。孔子は示唆してくれています。

 正しい動機を持ち、それにふさわしい方法を探った結果、儲からない決断もあり得る。むしろマイナスになってしまう可能性もあります。

「われわれとして正しいと思える判断をした結果、損失が出ました」とは、いまの時代にはなかなか言いにくいことでしょう。ですが、そこに仁があれば、堂々とその道を選んでいいのです。

 なぜなら、もしここで利益を優先して、仁に背くやり方を選んだとしても、「其の道を以てこれを得ざれば、処(お)らざるなり」。つまり、そのような利益は、保持することのできないものだからです。

 これは、現代の私たちにとってはとても高度な決断になりますが、自身(自社)の守るベきもの(仁)を通すことが大事か、目先の利益が大事か、といった話にもなってくるでしょう。長い目で見れば、当然、前者。守るべきものを投げ打ってまで得た利益にどんな意味があるのか、という話になるはずです。

 必ずそうなる、とは言い切れないのがいまの時代の複雑さです。さすがに孔子も、いまの時代の持つ速度感、多様性、複雑さまでは見通していなかったでしょうから、局面においては目先の利益が大事になる可能性も捨てきれません。

 このとき、どう決断するかは、現代の私たちに課せられているのです。あくまで、「其の道を以てこれを得ざれば、処(お)らざるなり」であることは、承知の上で。

※『論語』の漢文、読み下し文は岩波文庫版・金谷治訳注に準拠しています。

 文・舛本哲郎(ライター・行政書士)

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