西川社長留任がルノーとの交渉で不利に働く

ゴーン派幹部の解任で「ゴーン・カード」が使えなくなった側面もあるが、ゴーン被告が影響力を失った日産社内で彼の「子飼い」が使えなくなるのはフランス政府としても予想の範囲内だっただろう。むしろ、ゴーン派幹部の解任が、フランス政府にとっては「好都合」だった側面もある。

ゴーン派幹部の外国人役員だけを辞任に追い込んだということは、日産が経営陣の「フルモデルチェンジ」ではなく、日本人役員が残留する「マイナーチェンジ」で乗り切る方針を固めたということだ。当然、西川廣人社長も留任する可能性が高い。

フランス政府は西川社長留任の可能性が高まったことを、絶好のチャンスと見たのだ。西川社長は日産社内で「ゴーン・チルドレン」といわれる人物で、前任の志賀俊之最高執行責任者(COO)が抵抗していたゴーン被告の年間報酬10億円超えを受け入れた。日産が内部告発したゴーン被告の「不正」についても、何らかの関与もしくは「見て見ぬふり」をしていたのではないかとの批判が社内外でもある。

西川社長の留任が、ルノーとの経営主導権争いで「急所」になる可能性も(同社ホームページより)

ゴーン被告を解任して「身ぎれい」になった新ルノー経営陣が、不祥事を引きずる残留日産経営陣との「ポスト・ゴーン体制」交渉で優位に立つのは想像に難くない。ゴーン被告による「不正」を理由に日産の自主性重視を主張しても、「ルノーはすでに経営体制を刷新した。むしろ日産が不正にかかわった役員を温存しているではないか」と反論されれば、ぐうの音も出ない。

フランス政府は、ルノーの新CEOにタイヤメーカー仏ミシュランのジャン・ドミニク・スナールCEOの送り込みを検討していると伝えられた。ルノー自身ではなくフランス政府による人選である以上、新CEOはゴーン被告よりも迅速に日産との経営統合を進めることになるだろう。

少なくとも「日産との経営統合を早期に進める」と確約しない人物を、フランス政府が推薦するとは考えられない。目前に迫った「ゴーン解任」は、フランス政府主導の「ルノー・日産経営統合」を加速することになりそうだ。

文:M&A Online編集部