なぜ仏政府は「統合先送り」を狙うゴーン被告をかばったのか

フランス政府が求める経営統合は生産性が低く、コスト高のフランス国内での雇用増を狙ったもの。日産はもとより、同社からの配当で利益を確保しているルノーにとっても収益の足を引っ張る「悪手」だ。ルノーの業績が下がれば、ゴーン会長兼CEOの評価も下がる。「プロ経営者」のゴーン被告にとっては経営統合をなるべく先送りして、その悪影響が出る前にとして他社への転身を狙うはずだった。

ならばなぜ「牛歩作戦」で日産との経営統合を遅らせる可能性が高いゴーン被告を、フランス政府は「推定無罪の原則」をたてに庇(かば)ってきたのか?理由としては、以下の二つが考えられる。

一つは「訴訟リスク」である。日本で逮捕された直後にフランス政府が解任をルノーに働きかけ、不起訴あるいは無罪になった場合、ゴーン被告から地位回復や莫大な損害賠償請求を求められる可能性がある。ル・メール経済・財務相も解任の理由を逮捕や起訴ではなく、職務の空白期間の長さとしている。起訴後の保釈が棄却されたのを受けて、訴訟リスクを避けるための「時間稼ぎ」が済んだとみたのだろう。

もう一つは日産との交渉で「ゴーン・カード」が使えたこと。ゴーン被告をルノーの会長CEOに留めることで、日産に「ゴーンが復活する可能性もあるぞ」と圧力をかけるためだ。事実、逮捕直後は強気の交渉に臨んだ日産だったが、出資比率の変更どころか日産自身の新役員体制すら手を付けられない状況が続いている。

「ゴーン・カード」の切り捨てを決断をした背景には、日産によるゴーン派幹部の相次ぐ解任がありそうだ。中国事業統括で日産の収益責任を負うホセ・ムニョスCPO(チーフ・パフォーマンス・オフィサー)や高級車ブランド「インフィニティ」事業の責任者、ローランド・クルーガー専務執行役員の退任が退任。人事統括のアルン・バジャージュ専務執行役員も通常業務から外され、自宅待機中だ。

ゴーン派の外国人幹部が次々と消えていく日産グローバル本社(同社ホームページより)