火星などの惑星の環境を変化させ、人類の住める星に改造する「テラフォーミング」という言葉がある。地球化、惑星改造とも言われるこの夢のような構想の実現に役立つ可能性のある素材の量産化に取り組んでいるのが京大発ベンチャーのティエムファクトリ(東京都港区)。 

同社が手がける透過性と断熱性能が高いエアロゲル「SUFA(Super Functional Air)」が、火星の地球化を後押しする力を秘めているというのだ。ティエムファクトリとはどのような企業なのだろうか。 

宇宙開発に必要な「エアロゲル」とは

ティエムファクトリは、2012年11月に代表取締役社長である山地正洋氏によって設立された。山地氏は慶應義塾大学で工学博士号取得後、物質材料研究機構、産業技術総合研究所などで国家プロジェクトのポストドクターとして研究に従事し、2011年から京都大学に研究員として在籍しながらティエムファクトリを立ち上げた。 

エアロゲル自体は1931年に発明されたもので、地球上の固体の中で最も軽く、最も屈折率が低く、最も断熱性能が高い素材と言われる。

1990年代にNASA(米航空宇宙局)が宇宙開発用途で実用化に成功したが、現在でも航空、宇宙産業の限られた業界でしか利用されていない。製造するのに非常に高価な装置を用いなければならず、高コストな素材となっているためだ。 

そこでティエムファクトリは当時京都大学理学研究科准教授であった中西和樹氏(現・名古屋大学 未来材料・システム研究所教授)が開発したSUFAの量産化に向けて共同開発に着手。現実的なコストで板状(モノリス)エアロゲルを量産できる技術の開発に成功した。

「SUFA」は世界で最も使われている断熱材(グラスウール)の約3倍の断熱性能を持つ。このため従来の断熱性能を実現するための断熱材の厚さは3分の1で済む。断熱サッシ、断熱壁、断熱塗料などへの製品展開が見込まれる。さらに透過性が高いため自動車や航空機の断熱窓ガラスとしての応用も可能だ。 

さらに火星移住計画などの宇宙開発においても、透過性と断熱性能の高い「SUFA」を用いることで、火星の一部を地球環境と近づける「テラフォーミング」の可能性があるという。 

例えば温度の低い火星の地表を断熱効果のあるエアロゲル素材で覆うことで表面温度を高め、人が住めるようにするというものだ。

年月ティエムファクトリの沿革(同社ホームページより)

2012年11月

設立

2014年10月

NEDO研究開発型ベンチャー支援事業(スタートアップイノベーター)採択

2016年 8月

NEDO戦略的省エネエネルギー技術革新プログラム(インキュベーション研究)採択

2016年12月

経済産業省「飛躍 Next Enterprise」事業採択

2016年12月

第1回 J-TECH STARTUP認定

2017年 2月

第三者割当増資による資金調達(1億5000万円)を実施

2017年 3月

京都ベンチャー企業目利き委員会「Aランク」に認定

2017年 5月

新科学技術推進協会 第16回 グリーン・サステイナブル ケミストリー奨励賞を受賞

2017年 8月

科学技術振興機構 大学発ベンチャー表彰 経済産業大臣賞受賞

2017年10月

第1回無担保転換社債型新株予約権付社債(1億円)を発行

2018年 8月

NEDO戦略的省エネルギー技術革新プログラム(実用化)採択

2018年 12月        

第三者割当増資による資金調達(約4億円)を実施

2019年 4月

三菱UFJ銀行「Rise Up Festa」優秀賞を受賞

2019年 5月

めぶきフィナンシャルグループ「第3回めぶきビジネスアワード」最優秀賞を受賞

2019年10月

Innovation Leaders Summit 2019「ILS Award 2019」Grand prixを受賞