前回のコラムでは、「ビジネスモデル4象限」という図を用いて、起業・独立した人が多かれ少なかれ直面するであろう「受託の罠(ワナ)」と「死の谷」について触れしました。そして、偉大な起業家である孫正義氏を事例に、この考え方を深堀りしてみることを予告しました。

記事はこちらです スタートアップが乗り越えるべき「受託の罠(ワナ)」と「死の谷」

しかし、記事を読んでいただいた方から「”死の谷”は聞いたことあるが、”受託の罠”は知らなかった。」と感想をいただきました。そこで今回は予定を変更して、「受託の罠」という考え方についてもう少し詳しく触れてみたいと思います。

前回のコラムで活用した「ビジネスモデル4象限」の図を、今回からは「キャッシュジャーニーマップ Cash Journey Map (CJM)」と呼称します。

受託の罠の脱出ルートは4つ

起業家は、ヨノナカの課題を解決すると同時に、やはり「しっかり儲かってキャッシュが溜まる、キャッシュが回る」ことを実現するのが利害関係者への責任でしょうし、やりがいでもあるでしょう。多くの部下を抱えてプロダクト開発に邁進するスタートアップ経営者はもちろん、フリーランスの人も、応援してくれる家族や友人を安心させるためには、しっかり儲けたいと思っているはずです。

そのような「万全のキャッシュポジション」を確立するために、独立した人が試行錯誤する動きを表した下図を、ここでは旅になぞらえてCJMと呼ぶことにします。

図 Cash Journey Map(CJM)受託の罠脱出の4ルート

キャッシュジャーニーマップ(CJM)
筆者作成

では、このCJMマトリクスを活用して「受託の罠」について具体的に考察します。実は「受託の罠」という言葉は、いろいろな人がいろいろな意味で使っていると感じます。そこで、象限1から移行したパターン(受託の罠脱出ルート)を整理してみたのが上記の図①~④です。今回のコラムではまず、脱出ルート①について扱います。(②~④を、次回以降のコラムで扱います)。

コンサルタントやフリーランスエンジニア、あるいは弁護士事務所におけるイソ弁など、独立してすぐに十分なエンド顧客を得ることはなかなか難しい、もしくはできたとしてもそれだけでは不安ということが多いと思われます。 多くの場合、まずは二次請け(下請けという言葉は好きでないので使いません)からスタートするはずです。

または、お金を稼ぐ仕事は極力二次請けで効率的に行い、ライフワークや家族、趣味のための時間を確保する戦略もあります。いうまでもなく、これは独立した人の目的によって価値観が異なる話で、優劣の話ではありません。

しかしここでは、イソ弁の弁護士がやがて自分の事務所を持つことを夢見て仕事に励むように、「エンドのお客さんに直接請求書を発行できるようになりたい」という思いをもって起業しているケースを前提とします。

そのような思いがあるのに、なかなかそうならない。このようなケースが、上記で示した①のパターンです。(厳密には「受託の罠」というよりは、「二次請けの罠」、といった方がよいかもしれません。)