間もなく息子に株式を譲り、引退することを考えています。知人から「相続税を節税するために、利益を減らして自社の株価を下げる対策をしたほうがいい」と言われましたが正しいのでしょうか。( 相談者:76歳・会社オーナー)

企業価値の向上と矛盾する節税のための株価対策は本末転倒です。

 自社株の評価が上がると、贈与または相続税が高くなります。それを防ごうと、「株価対策」を行おうとする企業は少なくありません。

 税理士や公認会計士、コンサルタントなどの中には、オーナー経営者に対して「赤字を出して、評価額を下げましょう」といった提案をするところもあります。もちろん、それはできないことではありません。ただ、そればかりに気を取られてしまうと、会社の価値向上を阻害することになりかねません。

 赤字を出してでも自社の価値を下げようとすることは、付加価値の高い製品やサービスを提供することや、世のため、人のために貢献していこうという発想ではありません。私自身、そのような相談を受けても「無理に赤字をつくるようなことは本末転倒です。やめたほうがいい」と答えています。
そして、「毎日毎日、利益を上げよと社員にげきを飛ばしながら、決算前になるといきなり、利益を減らしたいと言うのは矛盾していませんか」と問います。

 贈与や相続も同じです。事業承継となった途端に、株式の評価減の為に、資産構成を変化、複雑化させると言われては社員のモチベーションも下がりかねません。何より、後継者の最初の仕事が節税というのでは、残念です。

 もちろんオーナー経営者の方々の気持ちは分かります。ハッピーリタイアをしたいのであれば、役員退職金をもらうという方法もあります。自分が個人保証をして業績を上げて育ててきた会社です。会社にちゃんと蓄積があるなら、そこからもらうのは当然です。自分がこれだけのことをやったのですから、堂々ともらえばいいわけです。税率も20~25%の分離課税で済みます。事業に精一杯力を注いで利益を出し、会社の価値を上げましょう。

 役員退職金のほかに、評価してくれる企業にM&Aで売却する方法もあります。子どもに承継はできないかもしれませんが、オーナー経営者の手元には一定の現金が残ります。オーナーが大きなキャッシュを手にできる機会は、退職金とM&Aの2つだけです。リタイア後の自分自身の人生を豊かにするという視点で考えることも大切だと思います。

回答者:税理士・本郷 尚/編集:M&A Online編集部

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