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日本製鉄のUSスチール買収に潜む想定外の「経済安全保障」リスク

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日米連合で中国の鉄鋼メーカーに対抗する狙いだが、米国内の反応は冷たい(Photo By Reuters)

経済安全保障では日本も「米国の敵」

米連邦議会でも野党・共和党の上院議員3人が12月19日、買収阻止を米国政府に要求した。与党・民主党にも経済安全保障上のリスクを指摘する声がある。2024年の米大統領選挙を控えたバイデン大統領も、米国のメーカーや労働者の反発を無視できない。

今年、米鉄鋼加工のエスマークとの間でUSスチールの買収合戦を繰り広げ、日鉄に横取りされる形となった同22位の米クリーブランド・クリフスも「経済安全保障」をタテに、日鉄傘下となったUSスチールに対して国産メーカーと同等の保護を与えることに反発するのは確実だろう。

「買収の狙いは経済安全保障」(19日の記者会見)と、日米合同での中国への対抗を念頭に合併を決断した橋本英二日鉄社長だが、米国側の反応は経済安全保障上の脅威として中国企業と同様の「敵国企業」とみなされている。反対論を押し切って買収を達成できたとしても、完全子会社化したUSスチールが「敵国企業」扱いでは満足なリターンは得られない。

岸田首相は再三にわたって「米国は日本にとって普遍的な価値を共有する唯一の同盟国。日米同盟がわが国の安全保障政策の要だ」と強調しているが、少なくとも経済安全保障については米国の見方は異なるようだ。日鉄のUSスチール買収は一筋縄ではいきそうにない。

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