円安による倒産が5年ぶりに20件台に
2022年に、円安で倒産した企業数は23件で、前年(6件)の3.8倍に達し、2017年(23件)以来、5年ぶりに20件台となった。
経済産業省が2022年11月に発足したM&A市場における「公正な買収の在り方に関する研究会」の論議が、今春の取りまとめに向けて大詰めを迎えている。企業価値を高める買収提案を活発化させるため、対抗措置を含めた当事者の行為規範を精査。M&Aによるリソース分配の最適化に結び付けたい考えだ。
日本のTOB(株式公開買い付け)はファンドやMBO(経営陣による買収)による意図的な上場廃止に用いられるパターンが多く、国内での規模拡大や業界再編は進みにくいのが現状。国内企業のM&A投資は不振企業の救済や海外案件に頼っており、買収対象企業の同意なきTOBと、当初の買収提案への対抗提案が示される競合的TOBは米・英・独に比べて少ない。
また近年では、有事導入型の買収防衛策の発動やその差止めを巡る司法判断が相次いだ。最高裁判所は昨年7月、複数の投資家に株を買われた老舗電線メーカーの三ッ星<5820>が予定していた有事導入型の買収防衛策の差し止めを決定。買収防衛策は過半の株主の賛成を得ていたが、最高裁は買収者側の株主権を過度に制限したことを問題視し、現経営陣の保身とも受け取れる買収防衛策の発動を認めない判断を突き付けた。
そのほか、TOBを巡っては当初の買収提案を契機に第三者から新たな買収対抗提案が提示され、経営陣と株主の間でその見解が分かれるケースが増加している。
研究会はこうした動きを受けて発足したもので、買収対象企業と買収者側に分けた公正な行為規範を論議。買収提案を受けた買収対象企業の説明責任を重視し、真摯な提案に応じない判断をする場合は「買収者側の企業価値向上策とできる限り十分な比較可能性を有する具体的な企業価値向上策を経営陣が提示すべき」といった案が話し合われている。
また、買収対象企業の取締役会に対しても「提案に応じないという判断の合理性について説明責任を果たせるようにすることが望ましい」との意見が出ており、財務アドバイザーやフェアネスオピニオンも用いた定量的な説明も含めることも検討されている。
さらに、M&A時に設置される買収対象企業の特別委員会には、
1.経営陣の保身などの影響を排除する取締役会の独立性
2.取締役の機動性
3.取締役会の専門性 の3つを補完する機能を持たせる案が浮上。社外取締役が過半数に満たず、取締役会で個別の業務執行決定も行うことが多い国内企業では、特別委員会の活用が有用な場面も多いと考えられる。
買収対象者 | 買収提案者 |
廣済堂 | ベインキャピタル(MBO)、南青山不動産 |
ユニゾHD | エイチ・アイ・エス、フォートレス、ブラックストーン、チトセア投資(ローンスター、EBO) |
ニューフレアテクノロジー | 東芝デバイス&ストレージ、HOYA |
島忠 | DCM、ニトリ |
日本アジアグループ | カーライル(MBO)、シティインデックスイレブンス |
関西スーパーマーケット | H2Oリテイリング、オーケー |
東洋建設 | インフロニアHD、ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス(任天堂創業家) |
経済産業省 公正な買収の在り方に関する研究会(第3回)事務局説明資料を基にM&A Online編集部作成
金銭を対価とするスクイーズアウトで非公開化・完全子会社化する取引(キャッシュアウト)の際も、特別委員会が設置されることが多い。研究会では「キャッシュアウトの場合、株主は買収後に増した企業価値を享受できないため、特別委員会が株主にとって有利な取引条件を実現し、株主などを含む市場への説明責任を果たす観点でも重要」としている。
一方、買収者側の行動については、買収局面における実質株主などに関する情報提供の在り方に着目。大量保有報告制度で規制対象とならない5%以下の保有などの段階で買収提案が予定される場合、実質株主が明らかではなく、買収対象会社の検討に支障を来す恐れがある。このため、研究会の論議は情報開示の仕組みづくりが焦点となっている。
また、同意なき買収の場合は株式を事前取得するのが一般的だが、日本では買収意向表明の厳格な規制が存在しない。事前の株式取得の目的を市場に開示すれば、TOBを実施する際も株主の理解を得やすくなる半面、「予告TOB」は市場や買収対象会社の地位を不安定にする側面もあり、双方のバランスを考慮した論議の行方が注視される。
「同意なき買収」におけるTOB開始時の株券等所有割合(2017年以降)
このほか、買収者が売却圧力を強めることで株主の意思決定を歪める可能性がある「構造的強圧性」などの行為をどう解消するかも重要なポイントとなる。
研究会は1月26日の第4回会合で論点整理案を提示。論点整理案は研究会での議論を経て、意見募集を実施することも想定している。その後は第6回会合(3月28日)までのスケジュールが決まっており、経産省が2019年度に策定した「公正なM&Aの在り方に関する指針」の改訂や新たな指針づくりを目指す。
文:M&A Online編集部
2022年に、円安で倒産した企業数は23件で、前年(6件)の3.8倍に達し、2017年(23件)以来、5年ぶりに20件台となった。
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