2023年6月16日、新しい資本主義実現会議は、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 2023 改訂版」(本改訂版)を公表し、その中でスタートアップのための資金供給の強化と出口戦略の多様化のための諸施策を掲げました。施策の内容は多岐に亘りますが、資本市場関連法制に関係する施策として、以下のものが挙げられています。
①株式投資型クラウドファンディングの活用に向けた環境整備
・発行総額上限(現行1億円)の引上げ及びこれに伴う開示等の投資家保護策の検討
・投資家の投資上限(現行50万円)につき、年収や資産に応じた上限額への変更
②未上場株式の取引環境の整備
・未上場株式のオンライン取引へのプラットフォーマー参入の促進(私設取引システム(PTS)での資本金要件等の認可基準、開示義務、システム要件等の緩和)
・資金調達の在り方の検討(適正な開示・情報提供や適切な勧誘の確保による投資詐欺の防止や適切な投資判断の確保、少額募集の在り方の検討)
③特定投資家私募制度等の見直し
・非上場有価証券の特定投資家私募について、新日証協ルール下での制度活用状況のフォローアップ
・プライマリー市場の取引拡大(特定投資家私募制度の見直し、少人数私募の在り方(人数制限や投資家の人数算定方法の変更等)、スタートアップの特性にも配慮した有価証券届出書の在り方等の検討)
④東京証券取引所グロース市場の在り方の検討
・成長性に関する指標の導入を含めた上場維持基準の検討
・上場廃止要件の厳格化等
スタートアップに対するリスクマネーの供給については、これまでも様々な制度改正がなされてきましたが、本改訂版に掲げられた施策はいずれも、かかる供給の促進ひいてはスタートアップの成長の更なる推進を図るものです。上記諸施策が実行され、法令等の改正へと発展した場合、スタートアップへの投資等をとりまく実務に相応の影響を与えることが予想されるため、今後の議論が注目されます。
パートナー 鈴木 克昌
シニア・アソシエイト 森田 理早
岸田文雄首相は29日、新しい資本主義実現会議であいさつし、企業経営者が事業撤退を決めた場合の退出支援について、M&A(企業の買収・合併)を含めて多面的な検討を行うと語った。