えっ、東京・板橋にも「田園調布」があった!
田園調布といえば、日本有数の高級住宅街。そんな田園調布に例えられる住宅街が板橋区にあるのだ。知る人ぞ知る「板橋の田園調布」とは?
東京都の西半分を占める多摩地区。住みたい街として人気の吉祥寺がある武蔵野市、ジブリ美術館の三鷹市、ハイキングの名所・高尾山を擁する八王子市をはじめ、26市(ほかに3町・1村)がひしめく。そんな東京の郊外にありながら、市内に1本の鉄道も通らない唯一の空白地帯がある。
答えは武蔵村山市。都心から向かうにしても市内に直接アクセスできないのがネックなのだ。南側に西武拝島線、東側に多摩都市モノレールがあるが、いずれも同市をかすめるようにして走っている。JRなら、中央線立川駅で降りて、バスかタクシーを利用するしかない。
武蔵村山市といわれても、ピンと来ないかもしれない。市の西側に米軍横田基地(福生市など)が広がり、北側は狭山湖・多摩湖(埼玉県所沢市)の湖域に面する。西武ライオンズの本拠地、メットライフドームもほど近い。
武蔵村山市が誕生したのは1970年。現在の市域を経由する鉄道計画がなかったわけではない。1960年代初めには吉祥寺・三鷹と埼玉県秩父市を結ぶ路線が計画された。ところが、政界汚職(武州鉄道汚職事件)に発展し、頓挫した。それ以前にも大正期に西武村山線が計画されたが、結局、未完成のままで終わった。
市民の足となっている西武拝島線(小平駅~拝島駅)が全線開通したのは1968年だが、これとて武蔵村山市内に直接乗り入れているわけでない。「東京唯一の鉄道の空白地帯」という有り難くないレッテルを張られたまま、今日にいたる。
そんな市がラブコールを送り続けているのが多摩都市モノレールの延伸だ。
実は、東京都が2020年度予算に上北台駅(東大和市)~箱根ヶ崎(瑞穂町)間約7キロメートルの延伸について、調査や基本設計の費用約1億2000万円を盛り込んだ。武蔵村山市を含む3市町にまたがる延伸が事業化に向けてようやく動き出した形だ。もっとも、完成までは10年以上かかるとみられている。
多摩都市モノレールは都や沿線自治体が出資する第3セクターが運営し、立川をはさんで多摩センター駅(多摩市)~上北台駅間の南北16キロメートルを19駅で結ぶ。1998年開業し、2000年に全線開通した。乗客数は1日平均14万4000人、年間5261万人(2019年度)。
武蔵村山市は村山大島紬の産地として栄え、今も地場産業として残る。日本の自動車産業の一翼も担った。当の日産自動車村山工場(旧プリンス自動車工業が1962年に開設)はゴーン改革で2001年に閉鎖したが、広大な工場跡地の一角には「プリンスの丘公園」が整備され、かつての栄華をしのぶことができる。
園内には「スカイラインGT-R発祥の地」を示すプレートが設置されている。スカイラインGT-Rは1969年に村山工場で生まれ、レースの世界で50連勝という偉業を達成したスポーツ仕様の名車だ。「ハコスカ」の愛称でオールドファンに親しまれている。
毀誉褒貶が相半ばする日産の来し方行く末をうかがい知るスポットの一つといえよう。
文:M&A Online編集部
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