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M&Aの評価で出てくる「マルチプル」って何?

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DCF法は、評価対象会社の将来キャッシュフローに基づき算定するため絶対評価です。将来予測や諸条件の設定が仮説に基づくため、事業計画や条件設定が適正なものでないと意味がありません。それに対して、マルチプル法は基本的に上場類似会社を基準とするので相対評価になります。さらに、算式上、負債・資本構成や設備投資の影響を排除することができます。このように、マルチプル法はDCF法よりも簡便的で、客観性が担保できるとされており、とりわけM&Aの入口でよく用いられます。

マルチプル法の注意点としては、適切な類似会社の選定が困難な場合がある点です。たとえ同じ事業を営んでいても、各社差別化のために工夫をしているはずなので全く同じ会社というのはこの世に存在しません。そのため、類似会社の選定は慎重に行う必要があります。

M&Aで企業価値を評価する場合

M&Aで企業価値を評価するときは、たとえば、DCF法とマルチプル法で評価するなど、単一のアプローチによるのではなく、複数のアプローチにより評価します。各評価には一定の幅があり、それらが重複する部分を意識した評価結果を導くことが多くなっています。マルチプル法を評価方法の一つとして用いる場合は、長所と短所を理解したうえで、企業価値評価に役立てていただければと思います。

参考図書
●Jonathan Berk ;Peter DeMarzo『コーポレートファイナンス入門編第2版』丸善出版、2014
●北地達明、北爪雅彦、松下欣親編『最新M&A実務のすべて』日本実業出版社、2015

参考ウェブサイト
●公認会計士協会「企業価値評価ガイドライン」https://jicpa.or.jp

文:藤本 江里子(税理士・中小企業診断士)

藤本 江里子 (ふじもと・えりこ)

税理士・中小企業診断士・ライター。立命館大学文学部卒業。立命館大学大学院にて法学修士を取得。都市銀行、会計事務所、コンサルティング会社を経て、現在は中小企業のあらゆる悩みに応えるためのコンサルティングや執筆活動を行う。得意分野は、事業承継、組織再編成、M&A、公益法人等の会計・税務など。


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