M&Aの売り手と買い手にそれぞれ別のM&Aアドバイザーがつく形態を「片手取引」、売り手と買い手の間に同じM&Aアドバイザーが入る形態を「両手取引」と呼びます。いずれの形態にもメリット・デメリットがありますが、それぞれの特徴を知っておくことで、M&Aアドバイザーの選定や取引の進め方の参考にもなります。

以下では、まずM&Aアドバイザーとの契約がどのようなものであるかを明らかにし、片手取引および両手取引の双方の特徴を整理してみることにしましょう。

M&Aアドバイザーとの契約はどのようなものか

両手取引と片手取引という話題に付き物なのが「双方代理」という言葉です。「両手取引は当事者の双方を代理するから好ましくない」という論調もよく聞かれます。双方代理に関しては民法108条に

「同一の法律行為については…(中略)…当事者双方の代理人となることはできない」

という規定が置かれています。これは双方の代理人となった者が、一方当事者の利益を優先した場合、もう一方の利益が害されることに考慮した規定です。つまり、「利益相反」の状態になることをあらかじめ排除しようという趣旨の規定といえます。

民法108条にいう「法律行為」の典型は契約を締結することです。たとえば、M&Aにおいて株式譲渡契約を締結することは法律行為に該当します。もし、この契約締結をM&Aアドバイザーが代理するとしたら、民法108条の双方代理の規定が適用されるでしょう。しかし、通常、M&Aアドバイザーの業務は法律行為の代理ではありません。

M&Aアドバイザーの業務は多岐にわたる専門的なサービスを総合的に提供するものです。一般的なM&Aアドバイザリー契約では、売り手あるいは買い手のための情報収集、情報提供、手続実施上の助言、契約書や覚書の作成、交渉の立会い、スケジュール管理などが含まれます。

つまり、こうした専門サービスについて業務委託契約を締結するのが一般的であり、両手取引となっても双方代理には該当せず、法律上は問題ないという訳です。