休眠会社は一般には無用の長物と考えられているが、あえて休眠会社を買収したり、ときには休眠会社を存続会社として吸収合併したりするケースもある。わざわざ休眠会社に対するM&Aを実施するメリットはどこにあるのだろうか。今回は休眠会社を買収する動機と休眠会社を取り巻く制度について整理してみたい。

休眠会社には法律上の定義がある?

休眠会社とはそもそもどのような会社を指すのであろうか。実は休眠会社には法律上明確な定義が存在する。具体的には会社法第472条に「株式会社であって、当該株式会社に関する登記が最後にあった日から十二年を経過したもの」と規定されている。つまり、最後に登記をした日から12年経過した会社は休眠会社ということになる。

会社法では役員の任期は最大10年となっており、少なくとも10年に一度は役員の変更登記が必要となる。そのため、最後の登記から12年を経過している会社は、法定の手続を経ておらず、実質的にも活動を停止している会社と判断できるのである。なお、休眠会社と同様、登記を基準として休眠一般社団法人や休眠一般財団法人も規定されている。

ただし、一般用語としての休眠会社はそれほど厳密な定義ではなく、ほとんど活動していない会社といった程度の意味である。本文中でも、特に断りのない限り、一般用語としての休眠会社を指すものとご理解いただきたい。

休眠会社のメリットその1(社歴や有限会社ブランド)

休眠会社は企業としての活動を行っておらず、買収することには隠れたリスクこそあれ、メリットなどないようにも思える。しかし、少なくとも設立年月日が古い会社であれば社歴が長いというメリットはある。実際、社歴の長い会社を装うために設立年月日の古い休眠会社を買うという話は聞かれる。

2006年5月に会社法が施行される前には有限会社法が存在したが、現在では有限会社を新設することはできなくなっている。そのため、有限会社であること自体が社歴の長い会社であることを示すことになる。そうした有限会社ブランドを手に入れるために休眠状態になっている有限会社を買収するという動機も考えられる。

ただし、いずれにしても表面的な体裁を整えたものであり、ややもすれば他者に誤解を与えることになる行為であることには留意したいところである。

休眠会社のメリットその2(資本金や設立費用について)

かつては、株式会社は1,000万円、有限会社は300万円という最低資本金制度が存在していた。そのため、休眠会社を買うことにより、資本金に相当するキャッシュを準備することなく、法人を持つことができるというメリットがあった。

しかし、2003年には確認会社(いわゆる1円会社)の制度ができ、2006年には会社法が施行されたことにより、現在では資本金が1円でも会社を設立することが可能となっている。そのため、資本金をクリアするという観点から休眠会社を活用するメリットは失われている。

また、会社の設立費用を節約する目的で休眠会社を活用することも考えられるが、休眠会社の価格と変更登記などの費用を考えるとメリットはほとんどないといえるだろう。