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「陽はまた昇る」(2002年)|一度は見ておきたい経済・金融映画&ドラマ<4>

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熱き男たちの夜のドライブ

松下電器産業相談役の松下幸之助に直談判するため、大阪へと向かうシーン。渡辺謙演じる事業部次長の大久保と加賀谷が静かに熱く語り合う。大久保が学生時代に山を登る度に持っていった詩集から詩の一節をそらんじると、加賀谷はVHS開発のプロジェクトを“山”に例え、最後までその山を登る決意をかためる。逆境でもあきらめない男たちの思いに胸が熱くなる場面だ。特に、映画冒頭では事なかれ主義だった大久保が加賀谷の背中を押すほど仕事への情熱を抱くようになっている姿は感無量。人を変えるのは人、そして人を動かすのも人なのだと思い知らされる。

松下幸之助の鶴の一声

VHSとベータマックスの争いにおいて、大きな発言力があった松下幸之助。というのも、当時最大規模の販売網を持つ松下電器産業がVHSにつくか、ベータマックスにつくかは規格統一にも影響するからだ。
映画では、そのことを象徴するかのように、加賀谷と大久保が松下幸之助にVHSの良さを直接訴えるシーンがある。この直談判は実際の話だという。ベータマックスが1時間録画なのに対し、VHSは2時間録画を基本としていたことも規格競争に勝利した大きな要因の一つだが、松下幸之助が独自の経験から抱いていた「持って帰れる品物は配達してもらう品物の10倍は売れる」という考えも小型で軽量のVHSに有利に働いたといえよう。こうして松下幸之助に「ベータマックスは100点満点の機械だが、VHSは150点や」と言わしめた。

余談だが、今年3月に「Victor」ブランドが復活するとの一報が報じられた。日本ビクターは、2008年にケンウッドと経営統合し、2011年には現在のJVCケンウッドとなった。2016年6月に新たな経営体制が発足したこと、そしてその年の10月には合併から5周年、さらに同年12月にはケンウッド70周年、今年9月にはビクター90周年というさまざまな節目を迎えるにあたり、従来の「JVC」と「KENWOOD」に加えて「Victor」ブランドを再定義、復活するとのことだ。第一弾として、この5月にも新技術を備えたオーダーメイド型のヘッドホンを発表する予定。果たして、VHSのようにビクターを照らす陽はまた昇るのか。今後の動向も気になるところだ。

文:M&A Online編集部

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