M&Aの相続対策、信託銀行をどう利用する?(2)

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相続対策次第で結果には大きな差が生じる…(写真はイメージです)

今回は信託銀行利用者相続対策のスキーム紹介の2回目。信託銀行には、普通銀行にはない、さまざまな相続対策のスキームがある。M&Aを行い多額の資金が入金になった経営者の多くは相続税対策が必要になるので参考にして欲しい。

受益者連続信託

生前に子だけでなく、孫世代まで財産を遺す道筋をつけたい方は多いだろう。そんな方にピッタリなのが受益者連続信託という仕組み。受益者連続信託を活用すれば、社長(本人) →長男→孫といった承継への道筋を生前に固めることが可能だ。

具体的なスキームは以下のようになる。
前提条件:本人(社長)・長男・孫
社長相続発生後は、受益権が長男へ。長男相続発生後は、受益権が孫へ

このようなことを本人が生前の時に用意することができるのだ。

受託者連続信託がマッチする方は以下のような希望を待っている方だろう。
・次世代だけではなく、その次の世代までの承継の道筋を決めたい
・自社株は後継者である長男に遺したい。長男が亡くなった後は、長男の配偶者に相続されることなく孫に必ず承継させたい
・財産を配偶者に相続させ、 配偶者が亡くなった場合は、残った財産を公益財団に寄付をしたい

受益者連続信託の主なメリットは3つある。
・信託財産を①長男→②孫の順番に確実に承継できる
・長男の相続発生時に配偶者への財産移転を防げる
・円滑な事業承継が可能となる

他益信託

配当などの財産的価値だけを承継し、議決権に関してはそのまま本人が持っていたい経営者の方も多いだろう。そんな方にピッタリなのが他益信託だ。他益信託を利用すれば、 議決権行使の指図権を保持したまま、 配当等の財産的価値のみ後継者へ移転可能だ。

他益信託のニーズがある方は、 ズバリまだ後継者に議決権を持たせるには早いので、 議決権は保持しておきたい方だろう。また、他益信託のメリットは、議決権は引き続き保持したまま、 財産的価値のみ承継可能なことだろう。

議決権保護特約

認知症などになった場合でも、議決権を滞りなく行使したいと思っている経営者の方は多いだろう。認知症は決して他人事ではなく現在、65歳以上の約16%が認知症であると推計され、80 歳代の後半であれば男性の35%、女性 44%、95歳を過ぎると男性の51%、女性の84%が認知症とみられている。

また10年後には、認知症患者が日本の個人金融資産の約1割を保有するといわれており認知症に対する対策は急務となっている。

議決権保護特約を使えば、認知症などで判断能力が著しく低下した場合でも、予め指定した第三者が本人に代わり議決権を行使することが可能だ。

議決権保護特約が必要な方のニーズは主に2つになる。
・将来、認知症などになった場合に備えたい
・自身が生存している間の議決権の行使を滞りなく行いたい

議決権保護特約のメリットはズバリ、認知症になった場合でも、 予め指定をした第三者が本人に代わって議決権を滞りなく行使できることだろう。

証券担保ローン (保有株式を活用した場合)

証券担保ローンとは、保有株式を担保にして借り入れが可能なスキームだ。一般的な証券担保融資の場合、株式時価総額の7割程度まで借り入れを行うことができる。証券担保融資を検討すべき方は、以下のような方になるだろう。

・創業家一族として売却できない上場株式を有効活用したい
・貸株は、低金利で且つ手続きが煩雑なので不満
・貸株取引の代替運用を検討したい
・相続税納税資金が不足しており、株式を担保に納税資金を借入したい

主なメリットは以下の3つ。
・担保融資を活用することで運用資金の借入が可能
・担保融資を活用することで納税資金の借入が可能
・有価証券の管理負担を軽減できる

納税資金にも利用することができるので証券担保融資は立派な相続税対策といえるだろう。

証券担保ローン (短期仕組預金を活用した場合)

証券担保ローン (短期仕組預金を活用した場合)は、預金を活用してレバレッジ運用をしたい方に検討してもらいたい商品だ。短期仕組預金を担保に運用資金の借入が可能なので、効率的に資金を使うことができる。直接相続には関係ないが面白いスキームなのでぜひ知っておいてほしい。

具体例→現預金10億円を保有。10億円の現金で短期仕組預金10億円を契約する。さらに短期仕組預金を担保に5億円を借り、最終的に 15億円の短期仕組預金を契約する。

証券担保ローンは以下のようなニーズがある方にマッチするだろう。
・レバレッジ運用を行いたい
・低金利時に融資を活用することで運用効率を高めたい

主なメリットは2つだ。
・担保融資を活用することで運用資金の借入可能
・借入よりも高い金利で運用することも可能

まとめ

2回に分けて信託銀行独特の相続対策のスキームについて説明をした。しかし、スキームの紹介だけではなかなか具体的な活用方法について思い浮かべられる方は少ないだろう。次回以降、信託銀行を使った相続対策の具体例について説明していきたい。

文:M&A Online編集部

M&A Online編集部

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