M&Aの相続対策、金融機関の「遺産整理商品」を利用する際のポイントとは

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M&Aで多額の資金が入ってきた経営者に万が一のことがあると、銀行などが提供する遺産整理商品を利用する相続人が増えている。銀行などが被相続人の財産の調査をし、相続人に代わって相続手続きを行うのが遺産整理商品。費用はかかるが経営者に万が一のことがあると財産の特定だけでも大変となるので、この商品へのニーズがある。そこで、円滑に利用するためのポイントを紹介する。

財産とは

通常、遺産分割で分けられる相続財産としては、預貯金、不動産が主なものとなるが、相続というのは、一切の財産が対象となるのであり、財産は預貯金、 不動産に限られるものではない。

例えば、動産としては自動車、家具、貴金属、美術品など、債権としては借地権、貸金債権、売掛金債権、有価証券、 株式、 出資持分権、死亡退職金、生命保険金などがある。さらには 知的財産権として著作権、特許権などが考えられる。

相続税がかけられる「財産」については、相続税の通達に次のような規定が設けられている。

「財産」とは、金銭に見積ることができる経済的価値のあるすべてのものをいうが、なお次に留意する。

①財産には、物権、債権及び無体財産権に限らず、信託受益権、電話加入権等が含まれること。
②財産には、法律上の根拠を有しないものであっても経済的価値が認められているもの、例えば、営業権のようなものが含まれること。
③質権、抵当権又は地役権(区分地上権に準ずる地役権を除く) のように従たる権利は、主たる権利の価値を担保し、又は増加させるものであって、独立して財産を構成しないこと。

遺産分割協議は争いがないことが前提

各金融機関が遺産整理業務を受託する場合、相続人の1人でも遺産整理業務の委託に反対しているときには、遺産整理業務を全うできないため、相続人全員からの委任を必要としている。

遺産整理業務の中で最も核心的な部分は、「遺産分割協議」である。逆にいえば、これさえ上手くまとまるのであれば、 その他の手続きはほぼ機械的・事務的なものに過ぎないとさえいえる。

そして、一旦遺産分割協議がこじれると、 往々にしてその内容はかなり複雑でまとまるまでに相当の時間がかかる。それまでの親族問における潜在的な相互間の不満が遺産分割を契機に吹き出すからだ。

例えば、次男が長男に「あの宝石と掛け軸があったはずだ」「預金がこれだけしかない理由を説明せよ」 などと次から次へと質問攻めにして、回答が遅れると「遺産を隠蔽する気か」と迫ってくることが多い。当事者間での話し合いが進まない場合には結局、遺産分割調停を申し立てるほかない。

なお、調停について「そんな裁判なんて…」などと敬遠する方が少なからず見受けられるが、調停というのは、 裁判そのものではない。調停委員を間に立てて、話し合いや意見の調整をする手続きだ。 調停を申し立てることに対して、抵抗感を感じる必要は全くないのである。

また、調停における話し合いでまとまらない場合には、「審判」 という手続きに移行することになり、この審判は裁判類似の手続きであるので、当事者間で合意できなくても、裁判所が諸般の事情を考慮して、公権的に判断を示すことになる。

この遺産分割の審判は、裁判類似の手続きであるから、その決定には強制力(拘束力)があり、相続人はこれに従わなければならない。

寄与分と特別受益

遺産分割協議がこじれる理由としてよく見受けられるのが、寄与分と特別受益の主張である。

①寄与分
ずっと寝たきりだった父が亡くなり、兄弟のうち1人だけが、ずっと面倒を見てきて他の兄弟がまったく面倒を見なかったという場合に、 面倒を見た相続人は取得する相続財産が他の兄弟と同額では納得がいかない。 

そこで、介護により相続財産の減少が免れていれば、 その減少を免れた部分を「寄与分」として自分によこすように主張できる。

②特別受益
父が亡くなったが、姉妹のうち1人だけが結婚したときに父から多額の結納金をもらっているような場合、他の姉妹は取得する相続財産が平等では納得がいかない。そこで、多額の結納金は「特別受益」となるとして、当人の取り分から減額するように主張できる。

まとめ

遺産分割協議は内容が内容だけに多くのケースで揉める。生前からしっかり遺産について法定相続人に話ができていればそのような事は起こらないかもしれないが現実はなかなか難しい。いざ相続が発生したときに困らないようにそもそもの相続の定義や権利などについてしっかり理解しておきたい。

文:M&A Online編集部

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