中小の規模拡大へM&A促進 国の制度設計WGが中間報告書

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コロナ後の成長戦略を提言

中小企業庁は1月27日、中小企業政策審議会基本問題小委員会の「制度設計ワーキンググループ(WG)」(座長・沼上幹一橋大学大学院経営管理研究科教授)が取りまとめた中間報告書を公表した。新型コロナウイルス克服後を見据えた日本経済の成長戦略として、中小企業の成長・規模拡大に効果的なM&Aの促進策などを提言した。

中小企業庁によると、新型コロナの影響で減収となった中小企業の割合は大企業より多い。中小企業は取引先への価格転嫁も進んでいないことなどから、大企業と比べた労働生産性の格差が徐々に拡大している。宿泊・飲食サービス業を中心に業種別の業況も総じて悪化しており、2020年の休廃業・解散件数は前年比6350件増の4万9698件(東京商工リサーチ調べ)と過去最多に達した。

中間報告書では、国内企業数の99%を占める中小企業の経営基盤を強化する上で、中堅企業への成長・規模拡大を通して生産性を底上げする必要があると提唱。経営資源の集約化に効果を発揮する手段の1つにM&Aを位置付けた。

規模を拡大している企業は雇用の伸び率が高く、さらなる規模拡大へと向かう好循環も見られる。厚生労働省が集計した2020年平均の有効求人倍率は前年比0.42ポイント減と、オイルショック後の景気後退に直面した1975年以来45年ぶりの落ち込み幅だったことから、コロナ禍で厳しさを増す雇用情勢の改善に結び付くことも期待される。

デューデリジェンス活用支援

M&Aの活発化に向けては2021年度税制改正で1.設備投資減税、2.雇用確保を促す減税、3.準備金の積み立てを認める措置が創設される。今後、税制を具体化する法的枠組みが整備されるに当たり、中間報告書では買収対象企業の資産価値などを精査するデューデリジェンス(DD)の活用を促す支援の必要性を説いた。

株式譲渡で所在不明株主の存在が阻害要因に

また、中小企業のM&Aでは、比較的簡易な100%株式譲渡の手法が取られることが多いが、中間報告書では所在不明株主の存在がM&Aの阻害要因となる場合があると指摘した。

現行の会社法では一定期間以上、会社からの通知が到達せず、配当も受領していなければ、株式買い取りが可能となる。ただ、買い取りまでに必要な通知不到達・配当不受領期間は最低5年と長いことから、一定の手続き保障などを前提に認定を受ければ1年に短縮できる特例措置の検討を求めた。

国の中小企業政策の全体像を検証した制度設計WGは2020年6月に設置。中間報告書は2021年1月まで計7回の会議で検討した結果で、1月27日に開かれた中小企業政策審議会基本問題小委員会と経済産業省の産業構造審議会地域経済産業分科会合同会議でも示された。

文:M&A Online編集部

関連リンク:中小企業政策審議会 制度設計WG中間報告書

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