ケンタッキーやピザハットを経営する日本KFCホールディングスと、ローソンの両社の大株主にもなっている三菱商事です。
日本ケンタッキー・フライド・チキンは1970年、三菱商事と米国のケンタッキー・フライド・チキンコーポレーションとの折半出資により設立されました。1988年には年間売上高1000億円を達成するなど急成長を遂げ、1990年に東京証券取引所第2部に株式を上場しました。2007年に米国のKFCコーポレーションが株式を売却し、三菱商事が親会社になりました。
ところが2015年11月、三菱商事は日本KFC株の一部売却を発表。持ち株比率は約66%から約38%に低下しました。三菱商事はこれまで穀物や飼料、KFC 登録飼育農場で育てられた国内産 100%の若鶏の生産に至るまでをサポートし、ケンタッキーの成長を支えてきました。KFCの開示資料によると三菱商事は株式売却後も「大株主として引き続き当社の事業をサポートする意向である旨の連絡を受けている」としていますが、影響力の低下は避けられません。
日本ケンタッキー・フライド・チキンの沿革 |
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1970年 米国のケンタッキー・フライド・チキンコーポレーションと三菱商事が共同出資で設立 |
1990年 東京証券取引所第二部に株式上場 |
1991年 ピザハット事業を開始 |
2007年 三菱商事が株式の過半数を取得し親会社に |
2014年 日本KFCホールディングスに商号変更し、持ち株会社体制へ移行 |
2015年 三菱商事が一部株式を売却、出資比率は約38%に低下 |
一方、ローソンは1975年にダイエーの100%子会社として設立されました。2000年に三菱商事と業務提携。2001年、ダイエーの業績悪化に伴い売却したローソン株を三菱商事が取得し、30%超を保有する筆頭株主になりました。三菱商事で外食事業を担当していた新浪剛史氏を2002年にローソンの社長に就任させるなど、資本と人との両面で経営への関与を強めてきました。
そして2016年9月、とうとう三菱商事はローソン株をTOB(株式公開買い付け)により出資比率を33%から50%に引き上げ子会社化すると発表したのです。KFC株の売却から1年もたたないうちの出来事です。
ローソンの沿革 |
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1975年 ダイエーの100%子会社として設立 |
2000年 三菱商事と業務提携 |
2001年 ダイエーが株式を売却、三菱商事が筆頭株主に |
2002年 三菱商事出身の新浪剛史氏がローソン社長に就任 |
2009年 フライドチキン「Lチキ」を発売 |
2013年 高品質フライドチキン「黄金チキン」を発売 |
2016年 三菱商事がTOBでローソンを子会社化 |
三菱商事がローソン株の取得に投じる代金は1440億円。ちなみにKFC株の売却代金は133億円です。三菱商事はKFC株の売却と同時にKFCに派遣していた役員の1人を辞任させており、人的な面でも関係性が薄れることが予想されます。
三菱商事の投資戦略の見直しにチキン戦争がどこまで影響を与えたのかは不明ですが、フライドチキンなど外食専門店の成長鈍化、専門店の需要を食って成長するコンビニという、消費市場の変化が少なからず投資判断に影響しているのではないかと推測できます。
ローソンを子会社化した三菱商事が自社の調達網を活用してローソンのフライドチキンに国産鶏を本格的に供給しはじめたら――。消費者にとっては朗報ですが、100%国内産を打ち出すケンタッキーにとって、ますます手ごわいライバルとなりそうです。
文:M&A Online編集部
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