企業買収の新しい手法として登場した「株式交付」、概要と活用状況は?

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M&Aにはさまざまな手法がある…写真はイメージです

3月に施行された改正会社法でM&Aの新たな手法(スキーム)として導入された「株式交付」。政府の成長戦略の一翼を担い、企業再編の促進を狙いとする。デビューしたての新制度だが、その概要や活用状況はどうなのだろうか。

“大先輩”の株式交換と違いは?

株式交付は買収対価として自社株式を用いることができる新制度。同じような制度はこれまで「株式交換」があり、1999年の導入から20年以上となる。名前が似通っているため、混同しがちだが、両者には決定的な違いがある。

“大先輩”の株式交換は完全子会社化(持ち株比率100%)を目的にする場合にしか使えなかったのに対し、完全子会社化を予定していないケース、つまり株式取得が50%超~100%未満の範囲で子会社化できるのが株式交付。いわば、「部分的な株式交換」にあたるのが株式交付だ。

買収対価として自社株式の活用は買収資金の調達が不要になることが大きなメリットだが、今回、完全子会社化という制約がなくなったことで、親子関係の形成が従来よりも行いやすくなることが期待されている。

ただ、株式交付はあくまで子会社化するための手続き。このため、子会社化後に株式を買い増して持ち株比率を高めるために再度、株式交付を行うことはできない。

M&Aの手法としては従来、合併、株式譲渡、事業譲渡、株式交換、株式移転、会社分割などがある。ここに今年、株式交付が加わったが、実は2001年に事業分離のための新手法として会社分割が導入されて以来20年ぶりの新顔だ。

3月の制度導入から3件の活用事例

では、活用状況はどうだろう。上場企業が提出した適時開示情報をもとに調べたところ、3月以降のM&A案件(319件、7月14日時点。グループ内再編を除く)のうち、株式交付の手続きを活用した事例は3件。5月に2件、6月に1件あった。

Eストアーはシステム開発のアーヴァイン・システムズ(東京都品川区)の株式50.17%、GMOインターネットは飲食店予約管理サービスのOMAKASE(東京都港区)の株式61.5%を株式交付などで取得し、子会社化した。この2つのケースではいずれも買収対価として自社株式と現金を組み合わせた。

また、プロルート丸光は血液検査事業などを手がけるマイクロブラッドサイエンス(東京都千代田区)の子会社化に際して、株式交付で50%超の株式取得(7月21日付)を目指している。

文:M&A Online編集部

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